日露外相会談開催 / ラブロフ外相「領土問題議論せず」

【モスクワ時事】岸田文雄外相は21日、ロシアのラブロフ外相とモスクワの外務省別館で約2時間20分会談し、北方領土問題の解決策を話し合う両国の外務次官級協議を10月8日にモスクワで再開することで合意した。ラブロフ氏は、日本側が年内を目指すプーチン大統領訪日の招請を「受け入れた」と明言、具体的時期に関し「ホスト国(日本)が決めることだ。提案があれば検討する」と前向きに対応する考えを示した。
両外相は、当面する国際会議の場を活用して、安倍晋三首相とプーチン大統領の首脳会談を行うことでも一致。ラブロフ氏は会談後の共同記者会見で、11月にトルコで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議や、フィリピンでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を例示した。
次官級協議は杉山晋輔外務審議官とモルグロフ外務次官が出席して今年2月にモスクワで行われたのが最後で、8カ月ぶりの再開となる。岸田氏は会談で、平和条約交渉の加速で合意した2013年4月の日ロ共同声明に基づき「双方に受け入れ可能な解決策をつくる作業を行っていく必要がある」とロシア側に促した。
また、岸田氏は今年7月以降にメドベージェフ首相や閣僚らが相次いで北方四島を訪問したことなどを取り上げ、「ロシアの一方的な行動や発言が繰り返されることは極めて遺憾であり、受け入れられない」と抗議した。
これに対し、ラブロフ氏は会見で、「会談で北方領土問題は議論していない。議論したのは平和条約締結問題だ」と強調。四島が第2次世界大戦の結果、ロシアの領土になったとの主張を踏まえ、「日本が歴史の現実を受け入れて初めて問題の進展が可能になる」と日本側をけん制した。 
会談では、ラブロフ氏の訪日についても今後、調整していくことを確認した。(2015/09/22-07:26)

【モスクワ時事】21日にモスクワで行われた日ロ外相会談終了後の共同記者会見では、岸田文雄外相が「中断していた平和条約交渉を事実上再開した」とアピールした。これに対し、ロシアのラブロフ外相は「北方領土は議論していない」とあえて言い張り、日本をけん制する場面があった。
日本側は「平和条約交渉はすなわち北方領土交渉だ」(外交筋)という認識で、従来と食い違うロシア側の真意を測りかねている。
ラブロフ氏は、プーチン大統領の年内訪日に当たり、領土問題で一定の成果を得ようとする日本にあらかじめくぎを刺したとみられる。10月8日に控えるモスクワの日ロ外務次官級協議でも、厳しい原則論の応酬が繰り返されそうだ。
岸田氏は、最近のメドベージェフ首相らの北方領土訪問や「(領土問題は)70年前に解決済みだ」という高官発言について、会談で「極めて遺憾であり、受け入れられない」と抗議。しかし、ラブロフ氏は「日本が戦後の歴史事実や国連憲章を明確に理解しないと平和条約問題の前進は難しい」と反論した。
北方領土については、ロシアは以前から「第2次大戦の結果、自国領になった。国連憲章敵国条項で認められている」という立場。ラブロフ氏は、日本が北方領土をロシア領と認めない限り、交渉はできないと突き放したに等しい。
さらに「首脳会談に前提条件を付けるのは非生産的だ」と主張。領土問題などに関係なく、無条件でプーチン大統領を訪日させるよう暗に迫った。訪日を実現させ、先進7カ国(G7)の対ロシア包囲網の突破口にしたい思惑も見え隠れする。(2015/09/22-14:38)<<