中露 領土問題で共同歩調か

中国とロシアは領土問題で共同歩調を強めるのだろうか。モスクワで12月初めに開かれた中露首相定期協議の合意文書では、ロシアが尖閣諸島問題で中国の立場を理解したとも取れる文言が入った。一方、中国は北方領土問題で、かつて日本返還を支持する立場だったが、最近は必ずしも態度を明確にしていない。今後、中露両国が領土問題でどこまで共同歩調を強めていくか、日本としても大いに気になるところだ。(フジサンケイビジネスアイ
温家宝首相とロシアのメドベージェフ首相の会談では、両国関係拡大に向けて広範囲な合意がなされた。例えば、(1)2015年までに2国間貿易額1000億ドル(約8兆4000億円)の目標の前倒し実現を目指す(2)全方位的エネルギー協力を推進し、両国のエネルギー安全保障と持続可能な開発を促す(3)航空宇宙分野で共同研究・開発、共同生産など戦略的大型プロジェクトの協力をより多く行う、などである。
肝心の領土問題については、合意文書の冒頭で「主権、安全、領土保全等核心的利益に関する問題で、双方は確固として支持し合う」とうたわれている。さらに両国の戦略的協力に触れた箇所では、「第二次世界大戦で得た成果と、その後の秩序を共に守る」との一文が盛り込まれた。これは尖閣諸島をめぐる日中対立を念頭に、ロシアが中国の立場に歩調を合わせたものと理解されている。
一方、合意文書を見る限り、北方領土問題については何も言及されていないが、最近の中国のこの問題への姿勢はかつてとは様変わりである。
中ソ対立が激しかったころ、中国は北方領土問題で、日本支持を鮮明にしていた。1965年に毛沢東はフランスの議員団と会ったときに、日本に返還すべきだと話している。また、1987年発行の地図出版社「世界地図冊」では、北方四島は日本領土と同じ色に塗られ、そこにただし書きで「ソ連占領」と書かれている。そのころは新聞などでも、盛んに北方四島は日本に返還すべきだとの主張がみられた。
しかし最近は、「日露の2国間問題であり、双方が話し合いを通じて解決してもらいたい」(2012年3月、中国外務省スポークスマン)とそっけない言い方に変わっている。中露関係の改善と日中関係の悪化という情勢変化の中で、今後さらに中国がロシア寄りの姿勢に転じてくる可能性もある。総選挙で大勝した自民党の安倍新政権が、共同歩調を取りつつある中露の間にどこまで割って入れるか、注目されよう。(拓殖大学国際学部教授・藤村幸義)<<