AERA.dot 鈴木宗男氏インタビュー「北方領土のことを忘れるな」

──日本がG7と歩調を合わせて経済制裁を科したことに対し、ロシア側は報復的に日本を「非友好国」に指定しました。


「日本とロシアの間には北方領土問題の解決と、平和条約交渉という重要な課題が残っています。ロシア外務省は対抗措置として、現状において平和条約交渉は行わない、北方四島(南クリル諸島)での共同経済活動に日本企業の参加を認めない、1991年から始まったビザなし交流の事業を停止する、などと表明しました。本来、こんな状況に至らないようにするのが外交です。一方的に西側諸国の価値観で動いて国益にかなうのかどうか、ということも冷静に考えなければなりません」


──元島民の方たちの墓参はどうなるのですか。


「戦後、四島から引き揚げてきた元島民は1万7291人で、ご存命の方が5474人(今年3月31日現在)。平均年齢は87歳になります。この2年間、新型コロナウイルスのため墓参ができていません。元島民の皆さんは、今年は何とか再開してほしいと強く希望しています。墓参は64年から始まった事業で、ビザなし交流とは別枠ですから今回の事業停止には入っていません。人道的な面はロシア側も配慮してくれているのです。4月23日に知床で起きた観光船の沈没事故でも、犠牲者と思われる2人のご遺体が国後島に漂着しましたが、日本側に引き渡すべく手続きを進めてくれております。


日ロ間で、長年続いてきたサケ・マスの漁獲量を決める『日ロサケ・マス交渉』も4月22日に妥結し、5月初頭から漁ができるようになりました。例年は4月10日が解禁日ですから1カ月近く遅れたとはいえ、サケ・マス交渉は厳しい冷戦時代でも続けられてきました。今回もロシアは交渉に応じてくれました。日本に対して、まだ窓口は残しておくという意思の表れだと思います」

──対話の窓口は開けてあるということ?


「そうですね。歯舞群島にある貝殻島周辺でのコンブ漁の交渉も例年より遅れましたが、6月3日に妥結しました。日本は北方領土を巡って、元島民の切実な願いや、漁業関係者の生活がかかっていることを忘れてはなりません」

聞き手は週刊朝日・亀井洋志氏。