遠のくロシア大統領来日

北方領土交渉の停滞打開に向け、安倍晋三首相が目指すプーチン・ロシア大統領の年内来日が厳しさを増してきた。メドベージェフ首相や閣僚が日本の反対を無視して北方四島を相次ぎ訪問。ロシア政府の強硬姿勢の前に、政治対話の雰囲気は消し飛んだ。ウクライナ情勢を受けた米国主導の対ロ制裁に加わりつつ、対話は継続しようとする日本の戦略は行き詰まりつつある。
岸田文雄外相の年内訪ロまではいけるだろう。ただ、大統領来日は成果が用意できない」。日本政府関係者はこう語り、プーチン大統領の年内来日は望み薄と指摘した。
ロシアのスクボルツォワ保健相が色丹島に上陸した7月以降、日ロ両政府は批判の応酬を演じている。今月3日にはモルグロフ外務次官が北方領土問題に関し「協議するつもりはない」と発言。外務省の林肇欧州局長は4日、アファナシエフ駐日大使を呼び、「首脳間の合意と異なる発言であり、受け入れられない」と抗議した。
7月以降、北方領土をめぐる抗議は5回目。特に、8月22日にはメドベージェフ首相が択捉島に入ったことで、大統領来日の準備のため同月末で調整された外相訪ロは延期を余儀なくされた。 
領土問題でロシア政府の強硬姿勢は一貫しており、日本政府関係者も「今までと言っていることは変わっていない」と冷静だ。ただ、挑発的とも言える最近のロシアの対応が、日本政府の神経を逆なでしているのも事実。ロシア経済は欧米の経済制裁原油安で苦境にあえいでおり、こうした現状へのいら立ちが制裁に加担する日本に向けられているのは間違いなさそうだ。
日本政府は、領土問題を動かすには首脳外交以外にないと見定めており、当面の焦点は、今月下旬のニューヨークでの国連総会に合わせて調整している日ロ首脳会談だ。ただ、大統領も対ロ制裁を続ける安倍政権に不信感を抱いているとされ、日本政府関係者は「大統領訪日を引き続き調整することを確認するだけで終わるのではないか」と多くは期待していない。(2015/09/06-14:35)<<