日露次官級協議 明日から開催

日本とロシア両政府は19日、外務次官級協議をモスクワで行う。北方領土問題に関し、4月の日ロ首脳会談で合意した「双方受け入れ可能な解決策」の策定に向けた事務レベルの協議を再スタートさせるとともに、経済、安全保障など幅広い分野の連携策について話し合う。
日本側は杉山晋輔外務審議官、ロシア側はモルグロフ外務次官が出席する。9月5、6日にロシアのサンクトペテルブルクで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合の際の日ロ首脳会談や、秋に予定されているラブロフ外相の来日に合わせた外務・防衛閣僚級協議(2プラス2)の開催に向けた調整も行う。
領土問題をめぐって日本側は、四島の帰属確認を求める従来の方針を堅持しており、歯舞、色丹2島の引き渡しで決着させる姿勢のロシア側との隔たりは大きい。今回は交渉の論点や進め方についての協議が中心となる見通しだ。

日ロ両政府による北方領土問題をめぐる次官級協議が19日にモスクワで行われる。4月末の安倍晋三首相とプーチン大統領の首脳会談で交渉再開を合意してから4カ月近く。ようやく始まる交渉で解決策を見いだせるのか。かつて日ロ交渉の責任者だった東郷和彦・元外務省欧亜局長に課題と見通しを聞いた。 (金杉貴雄)
 −次官級協議まで時間がかかったが。
 「非常に危機的だ。プーチン大統領が『引き分け』という言葉で解決に意欲を示したのは昨年三月。日本はそれから一年間、何もしなかった。普通ならだめになるが、四月の首相訪ロによって崖っぷちでつなぎ留めた。外務省が動かなければ年内には行き詰まる」
 −九月の二十カ国・地域(G20)首脳会合での日ロ首脳会談、秋のラブロフ外相来日が検討されている。
 「首脳会談も事務レベルの交渉が動いていなければ意味がない。ラブロフ氏は日ロ関係が最悪だったメドベージェフ大統領時代の外相で、柔軟な提案をするとは思えない」
 −解決するには。
 「互いにとって負けではない案を一緒に考えることだ。勝ちを増やそうとすれば相手の負けが増える。これではまとまらない」
 −双方が負けではない案とは。
 「私はロシアのパノフ元駐日大使と一緒に、四島のうち歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)は日本に引き渡し、国後(くなしり)、択捉(えとろふ)は日ロ双方の経済特区にするという案を提案した。日本は二島だけでは到底容認できない。国後、択捉からロシアを排除できないが、日本の主権の一部を入れて風穴をあけ、ある種の引き分けに持ち込む案だ」
 −プーチン大統領の本音は二島返還での決着という見方もある。
 「大統領が(歯舞、色丹の二島返還を明記した)日ソ共同宣言を繰り返し強調しているからと言って、結論はそれだけしかないというのは間違いだ。交渉すれば、結論は違うものになる」
 −そもそも四島は日本の領土。政府は四島すべてが日本に帰属することを確認するようロシアに求めている。
 「時間は残されていない。四島のロシア化はどんどん進行している。外国企業は進出するのに、日本だけが関われない。現実に何も起こせなければ(原則論は)自己満足にすぎない」

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