ボカロビギナーズ! Vol.2

アンメルツP主催のサークルG.C.Mが夏コミで頒布した同人誌。ネット音楽の歴史についての記述にムネオハウスも載っていました。上掲の公式サイトでWeb版が無料公開されています。

ニコニコ動画登場以前のDTM、ネット音楽

(前略)
さらにパソコンの性能やインターネット回線の速度が向上すると、音楽だけではなく動画を一般の方が公開し、視聴するという環境が整ってきました。当時、動画は Macromedia 社(現在は Adobe 社が買収)の「Flash」で制作し、個人サイトやアップローダーなどで公開するというのが一般的でした。

この Flash は、当時の「2 ちゃんねる」(http://www.2ch.net/、以下 2ch)文化と強く結びつき、数々の名作を生み出しました。2ch の設立は 1999 年であり、当時はまだ SNS もなかった時代に、今で言うところの「○○クラスタ」が集まる貴重な場でした。その中で育った文化の成果物などを動画として公開する手段として、Flash が重宝されました。

その Flash 動画で使用される音楽にも、注目が集まることが多くありました。洋楽の空耳などのネタも多くありましたが、中には muzie で公開されている同人音楽が BGM 的に起用されることもありました。例えば 2004年末のイベントで公開された「Nightmare City」(http://www.geocities.jp/clairvoyance_02/nightmare.html)という Flash 動画の「主題歌」として使用された 403 氏(http://www.muzie.ne.jp/artist/a003884/)の「SouthernCross」という曲は、muzie でダウンロード数が 6 桁を記録するという、当時のネット音楽としては前人未到のヒットを打ち立てました。こうして、同人音楽という存在が徐々に知れ渡っていくことになります。

また、こちらも 2ch 発ですが、当時のネット音楽で話題となった現象に、2002 年の「ムネオハウス」ムーブメントがあげられます。当時からは既に 10 年以上の時が経っているので、本来の意味での「ムネオハウス」自体を知らない人もいそうなので、Wikipedia で「鈴木宗男事件」「日本人とロシア人の友好の家」で検索してください。

この事件の際、鈴木宗男氏の国会での証人喚問がテレビのワイドショーで大々的に報道されるなどして話題になったのですが、あろうことかその声を録音して音素材として活用(サンプリング)し、音楽ジャンルの「ハウス」とかけて曲を作った人が現れたことをきっかけに、続々と有志によって曲がアップされ、アルバムが 20 枚以上も制作されるほどのムーブメントになったという出来事がありました。なお、当時のムネオハウス楽曲の PV を数多くFlashで発表していた人物として、現在の「わかむら P」(mylist/1399500)がいらっしゃいます。

そして 2005 年 2 月の「YouTube」誕生、2006 年 12 月「ニコニコ動画(仮)」誕生に伴い、動画の発表の場は個人サイトから徐々に動画投稿サイトに軸足を移していくことになります。
アンメルツP『03 ボカロ界隈歴史概論 〜作り手との関係を中心に〜』 「ボカロビギナーズ! Vol.2] (2013) p.10

わかむらPの人はFlashでは作ってなかったんですが、2002年当時にPVやMADといったmpgやavi形式の動画をあの手この手で大々的に配布してたムネオハウスは珍しい方ですし、後の世の方はswf形式で公開されていたものもキャプチャしてflvやmp4に変換されたのをYouTubeやニコニコでご覧になってますから、両者が同じ様に見えても不思議ではありません。

備考

記事公開日: 2016年2月28日