菅直人 苦しい選挙戦 他

◇「原発ゼロ」で打開図る
これまで連続10回当選を重ねてきた民主党菅直人前首相にかつてない逆風が吹きつけている。
「首相という立場で(東京電力)福島第1原発事故を経験した。『原発ゼロ』は私に託された課題だ」
衆院選が公示された4日、東京都府中市内の神社で第一声に臨んだ菅氏は、ビールケースの上に立ち、約30分の演説の大半を原発問題に割いた。選挙用のビラやポスター、のぼり旗、運動員のジャンパーまで、あちこちに「原発ゼロ」の赤い文字が躍る。聴衆は50人ほど。「30年代を待たずして十分実現できる」と党の公約より踏み込んで訴える姿は、首相経験者というより原点の市民運動家に近い。
東京18区で長く横綱相撲を続けてきた菅氏が、これまで唯一足をすくわれそうになったのが05年衆院選。「小泉旋風」のあおりで、地元・武蔵野市長から転身した自民党土屋正忠氏に約8000票差まで迫られた。だが、陣営は今回、それ以上の苦戦を覚悟する。首相時代の震災・原発事故対応は評価が分かれ、街頭演説では、菅氏に握手を求める若者の横から「うそつき!」とやじが飛ぶこともある。
一方の土屋氏は、05年こそ比例代表で復活当選したものの、09年はダブルスコアに近い大差で菅氏に敗れた。菅氏が府中市原発ゼロを訴えていた同じころ、土屋氏はJR武蔵小金井駅前に立ち、「民主党はやたらと役人をいじめ、それがあたかも政治主導だと言わんばかりだった。そのいい例が菅さんだ。退場してもらおうじゃありませんか」と声を張り上げた。
自民党にとって、菅氏に小選挙区で勝つことは「政権奪還」の象徴的な意味を持つ。もう一人の標的だった民主党鳩山由紀夫元首相は選挙直前に政界を去った。自民党森喜朗福田康夫両元首相が大苦戦し、海部俊樹元首相が落選した前回選挙の恨みは、必然的に菅氏に向かう。11月24日に武蔵野市に入った安倍晋三総裁は、沖縄県尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件なども挙げ、徹底した菅氏批判を展開した。
加えて、昨年6月、菅内閣不信任決議案に賛成して民主党を除籍された横粂勝仁氏が神奈川11区から「国替え」し、無所属で参戦。「政権交代の思いからずれたのは私か、それとも菅氏や民主党か」と訴える。原発問題では菅氏と立場が近いはずの日本未来の党杉村康之氏も「菅さんがいくら原発ゼロと言っても、民主党の政策とは違う」と菅氏を狙い撃ちする。
四面楚歌(そか)状態の菅氏は、それでも脱原発一本やりで局面打開を図る。菅氏をよく知る地元市議は「骨と皮になっても何とか逃げ切るには、古くからの支持層が離れてはいけない。自分の震災・原発対応が選挙戦の弱点になるという心理も働いているのだろう」と、かたくなともいえる菅氏の戦術を解説してみせた。【笈田直樹、念佛明奈】

(スポーツ報知)

政党か、はたまた「個人」の人気か―。大阪10区(高槻市三島郡)は小選挙区導入以降、同一候補が連続選出されたことのない激戦区だ。民主党辻元清美氏(52)、日本維新の会松浪健太氏(41)が出馬。自民党は新人の大隈和英氏(43)を送り込む。大阪府内でも投票率は高く、浮動票の取り込みがポイントとなる、今回の衆院選の縮図のような選挙区だ。
小選挙区導入の96年以降、同一候補が連続選出されたことがないという全国屈指の激戦区。05年は自民党の松浪氏、09年は社民党(ともに当時)の辻元氏が制し、2人の直接対決は1勝1敗の五分。両者とも比例で救われているが、今回はともにくら替えで臨む選挙だ。
今年9月に自民党を離党し、日本維新の会発足の中心メンバーとして尽力した松浪氏は「若い人だけじゃなく、ご年配の方の反応も温かい。『道州制やろ』と声をかけてくださる」と手応え。橋下徹代表代行(43)が解散後初となった街頭演説(11月19日)で駆け付けたほど、党を挙げて力を注いでいる。
対照的に、辻元氏は「個人力」で戦う。早朝のJR高槻駅近くでの街頭演説では「『橋下ベイビーズ』とか言われてますけど、『小泉チルドレン』や『小沢ガールズ』と何も変わらない。政治は即席ラーメンじゃないんです」とバッサリ。かつて国会で「ソーリ、ソーリ」と詰め寄り、当時の小泉純一郎首相がたじろいだほど、舌鋒(ぜっぽう)鋭いキャラクターの健在ぶりをアピール。
同陣営は「党名よりも辻元個人の名前を前に出して戦う。社民党を離れた後もついてきてくれる人はいるし、地元での人気はやはり根強いものがある」と期待。選挙でのイメージカラーのピンク色を身につけ、女性を中心に支持を訴えている。

二〇一一年分の政治資金収支報告書(中央分と地方分)によると、前衆院議員と参院議員の政治資金収入上位二十人のうち、自民党がベテランを中心に十三人と過半数を占めたことが六日、共同通信の集計で分かった。日本未来の党民主党は各二人、日本維新の会新党大地、無所属が各一人だった。
平均は三千三百四十二万円だった。政党別平均では新党大地が五千六百十五万円でトップ。新党改革五千二百四十四万円、自民党五千百五十六万円、国民新党四千九百七十一万円、日本維新の会四千三百九十四万円、日本未来の党二千七百九十万円、みんなの党二千六百五十四万円、民主党二千五百八十一万円、公明党千三百九万円、新党日本九百七十六万円、社民党七百七十八万円の順だった。
(後略)<<