ロシア大統領選挙 プーチン氏圧勝

【モスクワ時事】4日投票されたロシア大統領選は即日開票の結果、プーチン首相(59)が6割以上を得票し、第1回投票で当選を決めた。プーチン氏は同日深夜(日本時間5日未明)、モスクワ中心部のクレムリン(大統領府)に隣接する広場で開かれた支持者集会にメドベージェフ大統領とともに姿を見せ、涙を流しながら「われわれは勝利した」と宣言した。(後略)

【モスクワ田中洋之】4日のロシア大統領選で当選を決めたプーチン首相は、全国で約64%を得票した。ただ、共和国や州など83の連邦構成体別にみると、プーチン氏に対する支持の濃淡に違いが見られる。
人口約1050万人の首都モスクワは、プーチン氏の得票率が48.7%と連邦構成体で唯一、過半数を割り込んだ。経済的に豊かなモスクワは中間層が多く、昨年12月の下院選不正疑惑に対する大規模な抗議デモが続発するなど「反プーチン」感情が強いことを裏付けた。
また、無所属候補で富豪のプロホロフ氏(全国得票7.8%)はモスクワで19%、第2の都市サンクトペテルブルクで14%を得票し、ジュガーノフ共産党委員長を抑えて2位に入る健闘ぶりを見せた。「反プーチン」だが他の体制内野党といわれる候補を支持しない中間層や無党派層の票を取り込んだとみられる。ただ、プロホロフ氏は準備と知名度の不足から、全国的なブームを巻き起こすことはできなかった。(後略)

野田佳彦首相は5日午後、ロシア大統領選で当選を決めたプーチン首相に電話し、約5分間会談した。野田首相は当選に祝意を伝えた上で、北方領土問題について「英知ある解決に取り組みたい」と呼び掛けた。これに対し、プーチン氏は「全ての分野で日ロ関係を発展させるべく、野田首相と会うのを楽しみにしている」と応じた。
野田首相はまた、5月のプーチン政権発足以降、「大統領とともに日ロ関係の次元を高めるべく協力していくことを楽しみにしている」と、関係強化に意欲を示した。 
これに先立ち、野田首相プーチン氏に「最大の懸案事項である領土問題を解決し、日ロ関係を新たな次元に引き上げるべく協力していきたい」とのメッセージも伝達した。(2012/03/05-20:49)

政府はロシア大統領にプーチン首相の復帰が決まったことを受けて、北方領土をめぐる交渉進展の糸口をつかみたい考えだ。プーチン氏が先に領土問題解決に前向きな考えを示したことを評価。ただ、同氏が前回の在任中に2島返還で決着を図ろうとした姿勢を変えないことを警戒し、まずは新政権の出方を注視する方針だ。
野田佳彦首相は5日、プーチン氏に早速電話し、大統領選勝利に祝意を伝えるとともに「領土問題について英知ある解決に取り組みたい」と呼び掛けた。プーチン氏は「全ての分野で日ロ関係を発展させるべく会えるのを楽しみにしている」と述べ、日本との関係強化に積極姿勢を示した。
日本政府が着目するのは、プーチン氏が大統領選直前に行ったインタビューだ。同氏はこの中で、領土問題の最終決着に意欲を表明。ただ、解決方法はあくまで、平和条約締結後に歯舞群島色丹島を引き渡すとした1956年の日ソ共同宣言に基づくべきだとの考えを示した。
これについて、外務省幹部は「シグナルは見逃すべきではない」と強調。ロシアの実権を握るプーチン氏が再び政権を掌握することで、メドベージェフ現政権下で停滞する領土交渉が動きだすきっかけになり得ると期待を示した。同時に「56年宣言以外の解決策はないと言っている」とも指摘し、交渉進展への楽観を戒めた。
外務省は、プーチン氏の対日外交戦略について「中国の軍事力に対抗するため、領土問題を決着させて日本との協力関係を強化するのが狙い」(幹部)と分析する。日本側としては、プーチン氏の日本重視の姿勢を手掛かりに、粘り強く交渉を続ける以外にないのが実情だ。(2012/03/05-20:22)

強い指導力、問題解決への意欲、柔道有段者でもある知日家…。4日投開票のロシア大統領選でプーチン首相が当選したことで、停滞状態にある北方領土問題の進展に向けた野田政権幹部らの期待が高まっている。ただ、事務方は「領土問題はそんなに甘い問題ではない」(外務省幹部)と冷めた受け止めが大勢だ。
「今後、アジア太平洋地域の戦略環境が変化する中、ロシアとパートナーとしてふさわしい関係を構築すべく、さまざまな分野で協力を進めていく」
藤村修官房長官は5日の記者会見で意欲を示した。野田佳彦首相も3日の海外メディアとのインタビューで、プーチン氏が「最終的に解決したいと強く願っている」と発言したことを次のように歓迎している。
プーチン氏の発言は問題を解決していこうという意欲を感じる。真意は直接よく聞かなければならないが、これからさまざまな議論を深めていければ…」
政権首脳から好意的な反応が相次くが、外務省幹部は「(プーチン氏が日本と)しっかり話すという意欲を示したのはよかったが、従来の立場から大きく踏み出してはいない」と冷静だ。大統領時代に歯舞、色丹の2島を返還するとした1956年の「日ソ共同宣言」を上回る譲歩には否定的だったプーチン氏の姿勢は、今も変わっていないとみている。<<