第六回芸術道場昇段試験 "DJ雑音担当"氏の論文

村上隆氏が主催する芸術道場のウェブサイト上のコーナーに投稿された小論文にムネオハウスの記述がちょっとだけ載っていたのでピックアップ。
お題の「『萌え』の構造」に対して、DJとクラブミュージックの「ネタ」を題材に論を展開された"DJ雑音担当"氏のものです。

DJ達がシュミラークルを作成するうえでも、その価値基準はオタク同様に「粋」であるかどうかという価値基準に根ざしている。しかし、オタク系の二次創作が、その原作(ネタ元)の世界観(設定)に沿ってつくられているのに対して、DJにとっての「粋」とは、ネタデータベースに触れつつも、その原曲の初期設定とは遠く離れた設定に変換することである。例えば、浜崎あゆみの楽曲「M」の初期設定が「歌うこと(カラオケ:J-POP)」であり、背景に恋愛という「大きな物語」を持っている物語消費の作品だとすると、コンピレーションアルバム「Cyber TRANCE presentsayu trance」においてDJ ABOVE&BEYONDは、まず楽曲「M」の物語を構成していたフレーズ(歌詞)をバラバラに解体し、データベース化し、次に浜崎あゆみに関するネタ(萌え要素)の集合体をサンプリングすることによって、原曲を「踊る(ダンスミュージック:トランス)」という設定に変換することが普通に行われている。そして、この変換の過程において、「物語」は消失してしまい、トランスという「設定」だけが残るのである。
この「設定」の変換による「物語」の消失が顕著にみられるのが、2chで絶大な支持を受けたDJ MUNEOによるムネオハウスである。政治家である鈴木宗男の国会答弁や発言という、政治的背景のある「大きな物語」をサンプリングすることによって、ハウスミュージックという「設定」に置きかえたときに、政治的な発言は「大きな物語」を失い、ただの「ネタ(データ)」としてのみ曲中に存在するのである。
第六回芸術道場昇段試験合格者論文 お題『「萌え」の構造』"DJ雑音担当" (前回受験時「スヌージー」) さん

なお全体の論としては

DJがオリジナリティーを求める傾向にあることから、真性「オタク」であるかは議論の余地が残されるであろうが、DJが仮性「オタク」であり「オタク」的な要素を多分に内包しているのは、疑いのない事実である。
第六回芸術道場昇段試験合格者論文 お題『「萌え」の構造』"DJ雑音担当" (前回受験時「スヌージー」) さん

と結んでいらしゃいます。リンク先のページには東浩紀村上隆氏らの論評が出ているので併せてどうぞ。

補足

ページに更新履歴が残っていないのでこれが発表された性格な時期はわかりませんが、ページの情報によると7月下旬頃だったようです。