G7首脳宣言 ロシアへの追加制裁を示唆

ブリュッセル時事】欧州連合(EU)は1977年の初参加以来、初めて先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)の議長を務めた。エネルギー供給で欧州に直接影響が及ぶウクライナ情勢に関し、ロシアへの追加制裁を辞さない強い姿勢を貫いたものの、制裁の具体策は示されなかった。
今回の会議はロシアを外して開催されたが、EUはロシアをサミット体制から完全に追放する可能性について当初から消極的だった。ファンロンパイEU大統領は開幕前の記者会見で、「永久的な除外ではない」と述べ、ロシアがG8体制に復帰する可能性にも含みを残した。
英仏独はサミットの直後、第2次大戦のノルマンディー上陸作戦70周年記念式典に際して、ロシアのプーチン大統領と会談する予定。EUがロシアとの対決姿勢を一段と高めることに及び腰なのは、ロシアとの対話を模索し始めた主要加盟国に配慮せざるを得ない難しい立場があるからだ。
一方、今回の首脳宣言には、「エネルギー供給を、政治的威圧の手段として用いることは容認できない」「柔軟なガス市場をさらに促進する」との文言が盛り込まれた。EUは、天然ガス供給をロシアに依存する現状を変えようとする基本戦略を、G7と共有することに成功した。
5月に実施された欧州議会選挙では、反EUを叫ぶ極右勢力が台頭。これを受け、英仏がEU縮小論を唱えるなど逆風が吹いている。こうした中、EUは国際舞台で主要国をリードする指導力を誇示する一方で、加盟国の意向にも目を配り、バランスを取ることに腐心した。(2014/06/05-21:28)

ブリュッセル時事】先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)の外交政策に関する首脳宣言の要旨は次の通り。
ウクライナ】5月25日の選挙が成功裏に実施されたことを歓迎する。ポロシェンコ氏を次期大統領として歓迎する。G7ウクライナ政府、国民とともにある。ロシアによるウクライナの主権と領土一体性の継続的侵害を非難する。情勢が必要とすればロシアに対して追加制裁を実施する用意がある。
【シリア】アサド政権の残虐性を非難。6月3日実施の偽りの大統領選挙を非難。犯罪行為に関し、国際刑事裁判所への付託を求める国連安保理決議案に対するロシアと中国の拒否権行使は遺憾。化学剤の使用疑惑を深く懸念し、化学兵器禁止機関(OPCW)の調査団への全面的な協力を求める。
リビア】民主的なリビアへの支持を再確認。最近の暴力に深刻な懸念を表明。
北朝鮮北朝鮮の核・弾道ミサイル開発の継続を強く非難。すべての核兵器ならびに既存の核および弾道ミサイル計画を放棄するよう要請。国連調査委員会の報告書に記載された人権侵害について深刻な懸念を表明し、北朝鮮に対し拉致問題を含めたこれらの侵害に対処するため速やかな措置を取ることを要請。
【中東和平】二国家共存案での解決に向けた米国の努力を全面的に支持。双方に対し、最大限の自制と一方的措置の回避を求める。
アフガニスタン】民主的で主権を有するアフガニスタンに対して長期的に関与し、アフガン政府との揺るぎない協力関係を新たにする。
【海洋航海および飛行】普遍的に認められた国際法の原則に基づく海洋秩序を維持することの重要性を再確認。東シナ海および南シナ海での緊張を深く懸念。威嚇や力により領土または海洋に関する権利を主張する、いかなる一方的な試みにも反対。すべての当事者に対し、領土または海洋に関する権利を国際法に従って明確にし、主張することを求める。国際法に基づく航行および上空飛行の自由、ならびに民間航空交通の効果的な管理の重要性を強調。
【その他の問題】ボコ・ハラムによる女子生徒拉致を非難し、ナイジェリア政府を支援。(2014/06/05-09:56)<<