政府 4月の外相訪露見送りも

G7がG8首脳会議へのロシアの参加停止を決めたことで、北方領土交渉への影響は避けられない見通しとなった。安倍晋三首相は在任中の領土問題解決に強い意欲を見せているが、日本が独自にロシアに接近すれば、G7の“統一行動”を乱しかねない。4月に予定される岸田文雄外相の訪露も見送られる可能性が強まっており、日本が進展を期待していた領土交渉に再び暗雲がたちこめ始めた。
首相は25日のハーグでの記者会見で、クリミアのロシア併合に関し「平和的、外交的に解決しなければならない。日本も力を尽くす」と強調した。だがロシアは「G8に固執しない」(ラブロフ外相)として強硬姿勢を崩していない。
首相は就任後、プーチン大統領と5度会談し、個人的な信頼関係を築くことに腐心してきた。平成26年度予算案の国会審議がヤマ場を迎えていた2月には、ロシアの人権問題を理由に欧米主要国首脳が背を向けるなか、過密日程でソチ五輪開会式に出席。今秋予定されているプーチン氏の来日に際して領土交渉を軌道に乗せるべく、6月にソチで開かれるはずだったG8首脳会議で、6度目の会談に臨む算段をしていた。
しかし日本が描く対露戦略は狂った。領土交渉について外務省幹部は「G7とは別だ。各国とも個別の問題を抱えている。ケリー米国務長官とラブロフ外相が今でも頻繁に会って意見交換しているのはいい例だ」と指摘する。日本には米欧とロシアの仲介役になるとの大義もある。だが首相が「G7と協調して行動する」と明言した以上、“抜け駆け”は難しくなった。
菅義偉官房長官は25日の記者会見で、岸田氏の訪露について「具体的な日程は決まっていない。総合的に判断する」と述べるにとどまった。<<