年内解散説浮上

政府・与党内で、安倍晋三首相が年内に衆院解散・総選挙に踏み切るのではないかとの見方がくすぶっている。女性2閣僚辞任後の各種世論調査でも政権は50%前後の高支持率を維持しており、消費税率再引き上げの判断を先送りして選挙に突入するとの見立てだ。首相は否定しているが、野党が「政治とカネ」の問題で追及を強める中、自民党内では、野党側の態勢が整わないうちの解散が得策とみて期待する向きもある。
「解散あるかもよ」。自民党幹部は10月下旬、周囲にこう漏らした。谷垣禎一幹事長も29日の首相との会談後、記者団に「厳しい状況を打開しなきゃならない時にはいろいろ議論が出てくる」と述べ、早期解散の可能性に含みを持たせた。
9月の内閣改造では主要閣僚が軒並み留任。党役員人事でも谷垣幹事長ら重鎮を起用し、選挙向けの新鮮さより「党内安定シフト」(官邸関係者)を印象づけた。このため改造後は、解散は遠のいたとの空気が拡大。集団的自衛権の行使を可能にする法整備を終えた来年夏以降、再び内閣改造を行った上で解散するとの見方が主流となっていた。
しかし10月以降、新任閣僚の「政治とカネ」をめぐる問題が相次いで表面化。臨時国会では野党が攻勢を強めた。首相は12月には「どう決断しても政権批判が高まる」(政府高官)消費税率再引き上げの判断を迫られる。さらに年明け以降、集団的自衛権の行使に向けた法整備や原発再稼働など、世論を二分しかねない重要課題が山積している。
このため自民党の一部に「負け幅が少ないうちに解散したほうがいい」(中堅)との声が広がり始めた。野党の選挙態勢が整う前に解散に打って出た方が良いとの期待感もあるようだ。
年内解散はリスクもはらむ。政府高官は「政権が経済最優先を掲げながら、予算編成に影響が出る年内解散に踏み切れば整合性がとれない」。自民党関係者の一人は、政権の経済政策アベノミクスの恩恵が地方に行き届かず、地方創生などの成果も具体化していない状況を踏まえ「選挙で実績を訴えると言っても、今は訴えるものがない」とみる。(東京報道 柳沢郷介)<どうしん電子版に全文掲載><<