政府 対露追加制裁を検討 他

政府は23日、マレーシア航空機の撃墜事件を受け、ロシアへの批判を強める欧米と歩調を合わせるため、対露追加制裁の検討に入った。ただ、今秋に予定されているプーチン大統領の来日など日露関係への影響を最小限に抑えたいとして、査証(ビザ)発給停止措置の範囲拡大など「限定的な措置」(外務省関係者)にとどめる方針だ。
安倍晋三首相は23日、官邸で岸田文雄外相、斎木昭隆外務事務次官らとマレーシア機撃墜事件への対応を協議した。佐藤地(くに)外務報道官は23日の記者会見で「欧州連合(EU)や米国の動向を踏まえ、先進7カ国(G7)の連携を重視しながら適切に対応していく」と述べた。
追加制裁については、ビザ発給停止措置の対象者を拡大するほか、政府高官やロシア系企業などを対象にした日本国内にある資産の凍結を検討している。
日本は、4月下旬、ロシア政府関係者ら23人に対しビザ発給停止措置に踏み切った。しかし、EUが行っている資産凍結などの制裁措置は北方領土交渉に影響を及ぼすとみて見送ってきたため、制裁はG7の中では際立って小規模にとどまっていた。

ウクライナで発生したマレーシア機撃墜事件の余波で、今秋に予定されているロシアのプーチン大統領(61)の来日は見送りとなる公算となってきたが、安倍晋三首相(59)は、ロシアへの制裁もお構いなしで強行招聘に出かねないという。
マレーシア機の撃墜は、ロシアの支援を受けている親ロシア派勢力の誤射との見方が大勢だ。ロシアは3月のクリミア編入でG8から排除され、欧米諸国から制裁を受けている最中だけに、今後はさらなる非難や制裁強化が避けられない状況。そのため今秋で調整しているプーチン大統領の来日も政府や外務省内では難しいとの見通しを立てている。
ところが、安倍首相は19日に地元の山口・下関での講演で「ロシアは責任ある国家として国際社会のさまざまな問題に建設的に関与してもらわなければならない。そのためにもプーチン大統領との対話を続けていく。一日も早い平和条約の締結に向けて粘り強く交渉を続けていく」とロシア寄りの発言で、来日の可能性を諦めていないフシがあるのだ。
「安倍首相は就任後、5回もプーチン大統領と首脳会談を重ね、北方領土返還への手応えをつかんでいる。北朝鮮拉致北方領土は支持率回復どころか歴史に名を残し、長期政権への切り札になる。ロシア批判の国際世論が高まっても簡単にカードを捨てるワケにはいかない事情がある」(自民党関係者)
北朝鮮でも安倍政権は、拉致問題解決のために制裁を一部解除し、日米韓の連携にヒビを入れたばかりだ。
11月に日本で世界サンボ大会が開催され、日ロ友好のプランも進めている。「サンボはロシアの国技で、プーチン大統領国際連盟の名誉会長を務めている。安倍首相はプーチンと親交の深い森喜朗元首相を大会名誉会長に就任させ、スポーツ交流でも北方領土返還への雰囲気づくりを進めている。大会やプレイベントに何らかの形で、プーチンからのサプライズが期待されている」(永田町関係者)
ロシアと同調する独自外交を展開すれば、国際世論の非難は避けられないが…。<<