国後島で慰霊祭

北方四島への今年度最初の墓参団として国後島(くなしりとう)を訪れていた元島民らが22日、2泊3日の日程を終えて北海道根室市に帰港した。25日には第2陣が択捉島(えとろふとう)に向けて出港し、今年度の墓参は終了する。
今回参加した元島民・遺族は33人で平均年齢70.2歳。同行者を合わせた計44人が北海道の漁業取締船で20日に根室を出港、21日にボートに乗り換えて国後島北東部の礼文磯(れぶんいそ)と乳呑路(ちのみのち)に上陸した。
礼文磯の墓地には85人、乳呑路の墓地には201人が眠る。快晴で天候に恵まれたが、松林やササの葉が生い茂ったクマの生息区域を通らなければならず、墓地へ行くのを断念。2カ所とも墓地の手前に設けられた墓標で慰霊祭をした。
手作りの祭壇には故人の写真、お供え物の果物やお菓子が並べられ、遺族らが冥福を祈った。献花の後、ハーモニカの伴奏で「ふるさと」や「知床旅情」を合唱すると、目頭を押さえる人の姿もあった。
クマ対策のため、現地のロシア人ハンターも同行。乳呑路で墓地行きを断念した直後、ハンターから「草が少ない今年の秋に、道順を調べて目印を付け、次は皆さんがお墓に行けるようにしたい」との申し出があった。
墓参団長を務めた千島歯舞諸島居住者連盟根室支部長の宮谷内亮一さん(68)は「墓へ行けなかったのは残念だが、ロシア人ハンターからこれまでにない友好的な申し出があり、大きな収穫だった。かつて住んでいた場所の散策もでき、団員にとって有意義な墓参だった」と話した。(同行記者団)<<