プーチン大統領の訪日断念 対日関係の優先度低く

【モスクワ時事】ロシアのプーチン大統領が年内訪日を断念した。北方領土交渉が難航する政治分野も、ウクライナ危機後の制裁が影を落とす経済分野も、両国で十分な成果を準備できないためとみられる。ロシアがシリア空爆やエジプトでの旅客機墜落などテロ対応に追われる中、日ロ関係の優先順位は低いのが現状だ。
トルコで行われた安倍晋三首相との首脳会談では、訪日を年内にこだわらずに「最も適切な時期を目指して準備を進める」ことで一致した。昨年11月の日ロ首脳会談(北京)で、訪日を「2014年秋から15年中に」と先送りした道を踏襲。今回の最大の成果は「対話の継続」という当たり障りのないものとなった。
大統領は公式訪日を、先進7カ国(G7)の対ロシア包囲網突破や、経済協力での中国一辺倒解消に利用しようとしていた節がある。しかし、今やロシアはウクライナの停戦を進め、最大貿易相手である欧州連合(EU)との関係改善を「最重要課題」に据えている。制裁を発動したまま領土問題で成果を得ようとする日本に「ロシアは何も期待しない」(パノフ元駐日大使)という声も上がる。
20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国トルコは、ロシアが過激派組織「イスラム国」掃討を進めるシリアの隣国。ロシアが影響力を保持する形での内戦終結が、現時点でプーチン大統領の最重要課題だ。10月31日のエジプト・シナイ半島でのロシア機墜落は、爆破テロ説が濃厚。同組織の関与が疑われるパリの同時テロも起き、各国首脳との個別会談は中東情勢がメーンとなっている。
ロシアがシリア空爆に理解を求めたい中、日本政府は先に「懸念」を表明し、幻滅させた。戦勝70年で国民の愛国心も高揚し、プーチン大統領が日本に譲歩する材料は乏しい。ただ、大統領は今回の会談で安倍首相に「ロシアの一地方で会えればうれしい」と発言。対話継続を示唆するのを忘れなかった。(2015/11/16-22:56)<<