プーチン大統領来日 年内見送りへ

日本、ロシア両政府が調整してきたプーチン大統領の年内来日が見送られる公算が大きくなった。北方領土交渉の進展が見込めないためで、日本政府関係者は15日、「年内はもう難しい」との見通しを示した。ロシアが領土問題で強硬姿勢を取り続ける中、交渉の停滞は避けられず、安倍晋三首相は仕切り直しを迫られる。
菅義偉官房長官は15日の記者会見で、年内の大統領訪日を目指す方針に「変わりはない」としつつも、実現の見通しが依然立たないため、「さまざまな要素を総合的に考慮してベストな時期を探っている」と語った。
首相とプーチン氏は9月の国連総会時の首脳会談で、平和条約交渉を進展させることで一致した。しかし、今月8日にモスクワで行われた次官級協議でロシア側は、「北方領土は第2次世界大戦の結果、ロシア領となった」との立場を譲らず、交渉は行き詰まった。しかも、ロシアは経済協力の拡大を優先する姿勢を示している。
こうした状況を踏まえ、外務省幹部は「大統領が領土問題では『手ぶら』で来て、経済協力だけ持ち帰るなら、何のための来日かということになる」と話す。来日を急いでも日本にメリットは小さいという判断だ。 
大統領来日が困難なもう一つの理由として、米国の意向がある。ウクライナ情勢が好転しないことに加え、ロシアがシリアで空爆を行い、米ロの対立が深刻化。米政府は日本に対し、「ロシアと通常の関係を構築すべきではない」(高官)とけん制し続けている。
日本政府は引き続き、大統領来日に向けて調整を進める考え。首相は11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などの際に首脳会談を行い、対話のパイプ維持に努める。年明けにラブロフ外相の来日を先行させる案も浮上している。(2015/10/15-19:26)<<