日露首脳会談開催

【ニューヨーク時事】安倍晋三首相は28日午後(日本時間29日未明)のロシアのプーチン大統領との会談で、冷え込んだ日ロ関係の修復を目指した。北方領土問題を含む平和条約交渉を前進させることで一致。菅義偉官房長官は29日午前の記者会見で「非常に有意義な会談だった」と評価した。だが、実態は2013年4月の日ロ共同声明の内容を再確認したにすぎず、解決への道筋は、いまだ見えないままだ。
「13年4月の両首脳の合意に沿って進展させる必要がある」。首相は会談で、領土問題について「双方に受け入れ可能な解決策を作成する交渉を加速化させる」とした日ロ共同声明を取り上げ、領土交渉の「出発点」との認識を強調した。
ロシアは14年3月にクリミア半島編入を宣言して以降、日本を含む先進7カ国(G7)との対立が続いている。最近では、ロシアのメドベージェフ首相や閣僚による北方四島への訪問が相次ぎ、日ロ間の閉塞(へいそく)感が強まっていた。
それだけに、首相は今回、トップ会談での事態打開を目指した。首相には、大統領と個人的な信頼関係を築いてきたとの自負がある。冒頭で「これが11回目の首脳会談だ」と切り出すと、再三にわたって「ウラジーミル」とファーストネームで呼び掛け、親密ぶりをアピール。「大統領の訪日をベストなタイミングで実現したいという気持ちは変わらない」とも語り、年内来日という首脳間の約束を維持する姿勢を強調した。
これに対し、大統領の関心はもっぱら日本との経済協力で、会談では最後まで「領土問題」との表現を使わなかった。
日本政府は、「最高首脳の会談が全てだ」(菅長官)と、大統領の強い指導力に領土問題打開の期待を寄せている。だが、ロシア側は強い指導力を維持するため、北方四島愛国心高揚に利用しており、接点を見いだすのは難しい。
一方、ウクライナ情勢をめぐりロシアと対立する米国は、日本政府の動きに「今はロシアと『通常通りの業務』を進める時ではない」(国務省)などと不快感を隠そうとしない。日米同盟の強化を掲げる首相にとって、米国の意向は無視できず、米ロの間で難しいかじ取りを迫られそうだ。(2015/09/29-11:40)<<