2002年4月4日公開「季節の外でPro」ムネオハウス特集第8回(ゲスト: Lucky) インタビュー全文

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  • 脚注は2013年3月時点の情報に基いています。
  • インタビューを受けた方のプライバシーに配慮し、音源の直接公開は当ページでは行いません。

モーリー・ロバートソン (以下、モーリー):

「季節の外で」は、宗眠したい春。続いて2日目の糞暑い日に、神楽坂の出版社近くでLuckyさんにお話しを聞こうと思います。宜しくお願いします。

Lucky:

宜しくお願い致します。

モーリー:

それであの、Luckyさんは最近宗眠できてますか?

Lucky:

そうですねぇ、宗眠・・・ なかなかスレッドの「宗眠しまーす」っていうのは自分も書きたいなと思うぐらい、宗眠してませんね。えぇ。

モーリー:

要するに宗眠っていうのは、かなり上の方の一連の書込みのスレッドの中で・・・ どういう風に起こったかどうか覚えてます?

Lucky:

あまりその辺は覚えてないんですけど。やっぱり2ちゃんといえば独自の造語ですね、2ちゃん語といわれるような。そういうのがやっぱりコンテンツの中で1つ出てくると、やっぱり良い盛り上がりの1つになりますよね。

モーリー:

実はですね、私、言葉を今日スレッドを調べてきたんですよ。で、要するにムネオさんの記事やムネオさん関連のこのムネオハウスの音楽を、ムネオさん関連と言えるかは分からないけど、ムネオハウスを聴き続けてそういうことばっかり追いかけているうちに、その間に睡眠をしていたのが、睡眠よりもムネオの方が大事になって、とうとう宗男→睡眠→宗男→睡眠が宗宗眠眠になって、宗眠になっちゃうっていう。そういう(笑)

Lucky:

(笑)

モーリー:

でもよく分かる。宗眠は体感してますね。で、会社でいる間も?

Lucky:

はいそうですね、会社にいる間も。インターネットが見れる環境なので、毎日スレッドとポータブルサイト、後はイベントのオフィシャルサイトですね、そちらのBBSなんかをしつこいぐらい見てますね。

モーリー:

このイベント、まぁ日テレで出たことなんかをきっかけに、かなりブレイクをしていて。今日は夕刊フジの記事。これ直接関係無いんですけどなんとなく関係性が臭う記事ありますよね。吉本興業が辻本元代議士を雇いたいと言い始めた[1]。エンターテイメントとして扱いたいっていう、そもそもの発想はムネオハウスにある気がします。
あと確認してないですけど、東スポに載ったんでしたっけ?

*1 ・・・ 4月3日付け夕刊フジ記事「吉本が辻元を救う−常務がラブコール ムネオ似の坂田利夫とコンビ結成か!?」を参照のこと。

Lucky:

東スポに載ったらしいですね。東スポの方も「ムネオハウス」という形で取り扱ったというのを、また2ちゃんのスレッドで(笑)確認させて頂きました。

モーリー:

イベントは既に整理券が超過している感じ?

Lucky:

超過していますね。完全にイベントの方は私じゃなくて宮大工さんとumai bowさんが中心になって動いているみたいなんですけれども。再発行という形で。そちらでもやっぱり結構引きがあるというか、お客さんの集まりが良いと。予想以上ですよね。

モーリー:

お客さんの集まりが良いって言うことよりも、大混乱の一歩手前というか。

Lucky:

そうですよね。パニックですよね、ええ(笑) そういうのは起きそうですね。

モーリー:

(笑) この状況にあってね、宮大工さんとumai bowさんはどういう立場にいると思いますか?

Lucky:

そうですね、最初のやる規模っていうのは、逆に人が1人も来ないんじゃないか、来ても30人位じゃないかと。

モーリー:

30人っていう数字出てましたよね。

Lucky:

あの実数はどこから弾き出されたものかっていうのは微妙なんですけど。今までオーガナイズしてきた中で感じ取るのがそれ位だったんでしょうね。
だからその規模で考えていた事がいきなり300人、それ以上1000人来るんじゃないかと、それ位言われてる。じゃそうなったら自分たちは何をしようかと。整理が付かない状況じゃないでしょうかね。

--

モーリー:

ここまで話が広がってくると、かなりチームワークが芽生えていますね。

Lucky:

そうですね。2ちゃんねるじゃなんとなく珍しい光景というか。統制しようとするものを皆さん嫌うんですけど。自由奔放にやりたいというスタイルを出したいのに、1つの目標に対して忠実に混乱を起こさないように、茶々を入れないように仕事を進めているというのはすごい奇妙な感じがします
けど。これが2ちゃんねるのもう1つの良いところっていうのが出たんじゃないかなとは思います。

モーリー:

ドキュメンタリー作家の中野不二男さんっていう方がいるんですけど[2]、彼は第二次世界大戦中の日本人の心理というものをしばらく追跡していた時期がありまして。彼の通訳兼運転手を10年前位にやった事があったんですね。

*2 ・・・ Wikipedia - 中野不二男

Lucky:

(笑)

モーリー:

話を聴いたことがあったんですけど。彼はね、日本の第二次世界大戦における敗因というのは、日本側は精神論で、アメリカはあくまで合理的に、消耗戦の戦争の原理、つまり1日にどれくらいの飛行機や弾薬が消費されているかを考えついて、合理的に進めた。
一方日本の精神論者、所謂大本営アメリカを真珠湾で攻めてそのまま一気にアメリカを乗っ取ってしまうと思い込んだ理由というのは、アメリカを視察した日本の官僚だとか軍関係者が「アメリカ人はみんなてんでバラバラでだらしがない」で「自分に意見ばっかり言っている」って言ってた。

Lucky:

2ちゃんねるみたいな感じですよね、今の。第二次大戦中の日本の軍部が見たアメリカ。

モーリー:

つまり第二次大戦前のナメてたアメリカ。

Lucky:

そうですね。舐めてるアメリカの姿。それがまさに2ちゃんねるって言っても良いんじゃないかと思えるようなお話しですね。

モーリー:

なんか、バスケットボールって、あんまりやった事ないんですけど、見ているとみんなブラブラして(笑) その都度自分の何をやれば良いかが、隙間を埋めるようにサッと誰かが入って行きますよね。あんまり縦社会じゃないというか。
そういう第二次世界大戦時のスクランブルのかかったアメリカに例えても良いし、バスケットボールチームのような。どんどんどんどんみんなで即興的な統一した流れを作ってますね。

Lucky:

そうですね。それがやはり今回のパーティーですよね。まぁ緊急事態ですよね、いわば。30人しか集まらないと思えていたようなものに300人、もしかしたら1000人とか膨れ上がった人間が来てしまう。じゃあこのパニックをどう回避しようか。
ムネオハウスっていうムーブメントっていうのは、曲が出来ていく、ジャケットが出来ていくそういうムーブメントと、イベント、お祭りとしてのムーブメントとの2本の柱が今走ってると思うんですよ。その1本の柱は、イベントがなければ何事もなく頂点を迎えて緩やかに下っていくようなもの、そういうムーブメントだと思うんですけども。イベントの方は目標が見えているんですね。
その目標に対して皆さんがパニックが起こらない、良いイベントを終了させよう。きちんとした祭りを上げたい。その祭りの過程を見たい。祭りの終末を見たいという盛り上がりの期待感がこういうスクランブル状態になってるんじゃないかなと、私は思うんですけど。

--

モーリー:

ここまで認められると、ムネオハウスは違った意味合いや違ったチャレンジを社会に叩きつけている事になりますか?

Lucky:

いろんな提示っていうのはできると思うんですよ。実際、名も無き音楽の作家さん、職人さんですよね、そちらが勝手にサーバに上げる。それを「こういう曲が出来たから聴いてくれ」と。それをみんなが勝手にDLして聴いて、色々批評する。「面白い」「面白くない」「これはこういうネタの方が良い」そういう声が出ながら曲が集まってアルバムになる。それでアルバムのジャケットはどうしようか。そうしたら「ジャケット俺が描けるから描くよ」と。そういうのが上がってジャケットが出来て、印刷品質のものまでアップされる。

モーリー:

ポイントで。

Lucky:

そのポイント、ポイントでそういうものが出てきて、ひとつの区切りになって。じゃあもう1回スタートに戻ってまた発進しよう。じゃあ10曲目で区切りだから、ここでまた区切って新しく始めてみよう。
そういう時に、話を戻しますけど、楽曲の提供であったりとかジャケットの提供、それをCDに直せる、モノとして残せるような形にして提供するっていうのは、商業レベルでも使えるんじゃないかっていう風に思うんですよね。このムネオハウスが商用で使える使えないっていうのは別だと思うんですけど、ハイ。

モーリー:

吉本興業の辻本代議士に対してマネジメントしたいと手を挙げたということは、なんか暗示的にムネオハウスが商用に耐える資源としてみなされているような含みは感じられます?

Lucky:

吉本興業さん自体が色んな物のエンターテイメントとして楽しめるんじゃないかという提案の1つとして、ムネオハウスというものが耳に入ったときに、代議士さんもキャラクターの立った人ならば、十分世間にエンターテイメントとして使えるんじゃないかと言う風な判断からこういうものが来るんだと思いますね。

モーリー:

ただし、さっきの比較に戻るんですけどね。言ってみれば元々はカオスとかガウスノイズのようにみんながてんでバラバラな、遊軍的な、北部同盟[3]というのもちょっとおかしな言い方だけど、「みんな適当に何でもやっちゃえ」みたいな人達が、急に団結した結果の強みっていうのが今回出てるわけですよね。
これに対してあくまで吉本のスタイルというのはこれマスゲームじゃないんですか?

*3 ・・・ 時期的にこの北部同盟アフガニスタン紛争時の反タリバン政権勢力を指すと思われる。参考: Wikipedia - 北部同盟 (アフガニスタン)

Lucky:

そうですね。元々パワーを持っている。今ムネオハウスに関わっている人一人一人っていうのは全然普通の人ですし、パワーを持ってるというものでは無いですよね。いきなり吉本興業さんでしたら。テレビというマスメディアを使った展開っていうのもできますし。

モーリー:

マスメディアで一番強いとも言われてますし。

Lucky:

そうですね。

モーリー:

吉本に逆らえる人はテレビの世界にはいないと言われてます。

Lucky:

それでしたら良いところ良い時間枠で、キャラの立ったものを放送できるっていう強みってのはありますよね。こういうインターネットみたいなアンダーグラウンドな世界で動くのとは全然違った。

モーリー:

ただ、マスゲーム型の吉本興業ムネオハウスに手を出して、例えばここの関連で動いている人達に上手く個人的に接触してね、引っこ抜いたり。あるいは「君は覆面のままで良いから」と言って、アレンジャーや作曲家として、デザイナーであるとかを抜いて作ったとしますよね。それはこのインタビューシリーズの初期の頃に出てきた宮大工さんが言ってた事だと思うんだけども、「さぁこのサンプルをどうぞ使って良いですよ」っていう「良い子のムネオハウス」になっちゃうんじゃない?

Lucky:

その「良い子のムネオハウス」をやったときにじゃあ誰が食い付いてくるんだ、と。

モーリー:

その他一般の90%の人口とか。

Lucky:

そうですよね(笑) 一般の人はクリエイティブなところを刺激されるかというと、すごく刺激されないと思うんですよね。
与えられたものをそのまま食べてるだけじゃ物足りないっていうところからこういうムネオハウスみたいな事ってのは出ていると思うんですよ。自分たちで勝手に加工できる、やりたい放題できるっていうメリットがあったのでこういうムーブメントになったんだと思いますし。

モーリー:

そうすると・・・ 質問の仕方が微妙になってくるんですが、ムネオハウスっていうクリエイティビティを支えたり発揮したりする事で利益が生じる事があってはいけないとおもいますか?

Lucky:

私はそれはあってはいけないと思いますね。ムネオハウスっていうの自体はダジャレですから。それをどれだけ自分の中で盛り上がって。対価を求めないってことは自分の盛り上がりですよね。マスターベイションみたいなものですよね。自分が気持ちよければ良い。そこに更に周りが付いてくれば、もっと大きなものになって、今のムーブメントみたいになるわけですよね。

モーリー:

一時、お言葉をLuckyさんに返すようなんですけど、マスターベイションっていうのはムネオハウス以前のガウスノイズであるところの2ちゃんねるなんじゃないでしょうか。

Lucky:

あ、確かに。そこで発散してるものなのかもしれません。

モーリー:

つまり初期衝動はそうだったのかもしれないけど、今はスクランブルが掛かっていて、何らかの変異が起こってるわけですよね。この状態は良いわけでしょ?

Lucky:

そうですね。良いように動くとは思うんですけど。実際これはイベントがあるからこういう風な事が起きるわけで。じゃあいろんなメディアが食い付いてきて、これを商用で使おうとしたら、まず職人さん達の引き抜きであったりとか、ジャケットをやるデザイナーさんの引き抜きが始まったりするわけですよね。
その時に、その人達が抜けていけば抜けていくほど体制が分かれていきますよね。メディアに擦り寄った側がメジャーになって好きになる人もいれば、「俺は昔のアレが好きだったんだ」と。「今のメジャーなのは見てらんない」とか言うような人も出てくるわけですよね(笑)

--

モーリー:

Luckyさんが今まで一番心奪われた作品はどれですか?

Lucky:

やっぱり「dj battle」がすごい良かったんですけど、その後5枚目の「Usodayo」とか、あれはバックグランドの声の加工の仕方であったりとか曲の展開とかすごい完成度が高いなぁと思って。あそこは最高峰だなと思ったときがありました。

モーリー:

ジャケットは?

Lucky:

ジャケットは2ndが大好きですね。ムルアカさんとの顔。イラスト調のタッチのやつですね。あれがすごい好きです。

モーリー:

最近、音もジャケットも洗練の傾向が・・・ ていうか変な話、マスコミでブレイクするのとほぼ時期を一つにして、マスコミの紹介の水準を上回る作品が出てきつつあるのよね。

Lucky:

そうですね。それまでのちょっとバタ臭いっていうか、インディーズっぽい、アングラっぽい流れより、洗練された曲っていうのが。逆に自分としては寂しいところがあるかなぁと。商用にすぐ乗っちゃうかもしれないっていうレベルのものが出来てしまったっていうのが、商用も喰い付きやすいところなんでしょうね。

モーリー:

あの、カリスマティックな関係のボーカリストだった人が、バラエティショーの司会者になる、そんな感じ。

Lucky:

あ、そういう感じですね。牙抜かれちゃったみたいな(笑)

--

モーリー:

ムネオハウスがこれだけ急速に、本当に爆発的に、ファイル転送を通じて、それとスレッドとの絡みですよね。幾つかの要因がありますよね。目に訴える視覚の方面、聴覚、活字っていうかスレッドだよな(笑)

Lucky:

そうですね(笑)

モーリー:

マルティメディアの展開を最初からしたのよね。あの、ADSLとかそういう環境に激しく依存したものだと思います。

Lucky:

そうですね。今一番環境的に、昔の336とか、ちょっと前の56であったりとか・・・

モーリー:

何なんですかサンサンロクとかゴーロクとかって。

Lucky:

転送速度なんですけど。56k(bps)であったりとか33(kbps)ぐらいの。

モーリー:

ISDN以下?

Lucky:

そうですね。今言われるところのナローバンドですよね。それの8倍〜10倍、それ以上の接続環境があると。そうなると2-3MBのファイルだって3分とかで落とせるわけじゃないですか。1曲3分で落とせるのと1曲30分掛かって落とすのでは、やはり広がり具合は全然。

モーリー:

それで先ほど言った、ちょっと腹黒い系のITの「音楽ダウンロードで君もデビュー」会社ね。幾つか代表者に会ったことあるんですよ。であんまりに意識低いんで、エンガチョ(笑)

Lucky:

(笑)

モーリー:

しちゃって(笑) 絶対関わってあげないみたいな。それでね、その時代ってISDNが最速だったの。だから1曲を根性でえっちらおっちらDLして、しかも電話代 + 従量制の通信費 + 課金、三重に収める奴がいるんじゃないかっていう期待のもとに作られたモデルだったからあっという間にポシャったのよ。ザマァ見ろだったんだけどね。

Lucky:

ええ。

モーリー:

でも、今だとあっという間に。速いときは、うちはADSL8Mなんですけど、1MBが1.5秒ぐらいかな。

Lucky:

速いですね。自分ところは下りだと600(kbps)位なんで。それでも昔に比べたら凄い早かったんで気楽にDLできますし。すぐ落とそうと思って、自分の中が盛り上がってる間に落ちてきて、それを聴いて大笑いして、またレスを返すと。そういう早いレスポンスが返せるんですよね。

モーリー:

だからインフラ全体が質が上がっていることが、ムネオハウスを支えるマストの部分ですよね。

Lucky:

そうですね。やはりインフラが整ったっていうのが、ブレイクスルーを早くしたっていうのはあると思います。

モーリー:

それから物理的な部分で。CDを焼いてる人。CDを焼く速度も上がってるということもやっぱり隠れた要因でしょうか。

Lucky:

そうですねぇ。CDを焼くっていうのはやっぱり大量生産になっちゃうんでしょうけど。個人で焼くレベルでも今まではCD-DAだとどうしても等倍で焼かないと音飛びしちゃうとか音の劣化が激しいとか言われているんですけど、4倍、8倍、10倍とかで焼いても普通に聴ける。そうなるとやはり気軽にCDも作れますし。そういうのが大きいと思います。

モーリー:

より細かい要因になるんですけど、例えばiPodのようなmp3プレーヤーの普及も絡んでるとおもいますか?

Lucky:

そうですねぇ。やはりmp3プレーヤーはPCと連動して使えますんで。今楽曲がmp3で配信されてますよね。それを直接自分で編集してマイ・ベストで毎日通勤で聴けると。そうなるとやはり音楽が身近になりますよね。

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モーリー:

これだけ転送速度が早いと、かつてISDNの時代というのはね、曲をDLする待たせ時間が大変だったから、リアルオーディオのストリーミングで行こうとか。あとQuicktimeISDNのレベルでなんとかして小さな映像を動画を届けたいと。あんまりナローバンドだとQuicktimeは上手くいかないような・・・ ボロボロですよね。音なんか変なエイリアス起こして、ガリガリになるし。ところがブロードバンド化し始めますと、ファイルのDLもとても早いし。例えば映像作品を15コマ/秒ぐらいで動かしていても、相当の大きさのものを・・・ 今はフラッシュが中心だけども、例えばノンリニア編集でQuicktimeムービーとかを作っても、今だったら見るに耐える速度で。

Lucky:

スピード自体は問題ないと思います。そうなると作る技術者の問題になってきたりするんでしょうけど。実際Premiereとかの動画ソフトですよね。

モーリー:

After Effectsとか。

Lucky:

そういう感じで(笑) 今Flashが一番軽いからナローバンドの人も安心して見せれるっていうとこもあるのであれを使うんでしょうけど。それ以外でもやっぱり映像ですよね、そちらを使ったPVとか、自分で作り出す人が出てきてもおかしくない。

モーリー:

見ていて、今のところは音楽とちょっと軽めのPVのフラッシュという感じがするんですけど。これやろうと思えばね、TVのソースをサンプリングしたりVJしたりして、レンダリングをかけてしまえば、TVの動画そのものをVJ素材にしてしまえるとか。今は静止画コラージュじゃないですか。それを動画コラージュにあっという間に出来るというか。あの日テレの奴見ました?

Lucky:

見ました。あれはすごく笑えましたよね。フラッシュとカット割りは一緒なんですよね。

モーリー:

一緒なんだけど・・・ あれ多分ね、僕取材を受けたときに隣にノンリニアのAvid[4]の編集室があったのね。だからAvidでやったんじゃないかなと思うんだけど。

*4 ・・・ アビッド社のノンリニア映像編集システムの事。参考: Wikipedia - アビッド・テクノロジー

Lucky:

なるほど。そうなるとやはり、なんでしょうねぇ、本格的なものができると。

モーリー:

職人的立場の言い方なんですけど、あれって見てて程度とか甘く無かったですか? 全部なんかクロスフェードとかディゾルブばっかりて。もっとフラッシュってガガガガガッって尖ってるのに、そういう尖った編集が無くて不満に思わなかった?

Lucky:

そうなんですよ。逆にシュールさが出ないっていうか。そのまま動画をキレイなコマで流されると、どうしてもガガガガっていう切るっていう、アレが。

モーリー:

だから興味深いところが2つあったのね。1つはそうやって丸まっていく姿があたかも「良い子のムネオハウス」を暗示しているみたいだった。もう1つは、なんだっけな・・・ 忘れちゃった。ゴメン、1回止める(笑)

--

モーリー:

はい、何となく思い出しました。多分言いたかった事はこうだと思います。要するにFlashのガガガガッていう急激な動きですよね、ノンリニアな激しいカット、そういうモノのほうがムネオハウスのような企画性というか相性が。VJっぽいっていうの?

Lucky:

そうですね。VJっぽいっていうか、やはり音楽とシンクロした動きが。

モーリー:

思い出したゴメン(笑) 清美議員の言葉がシンクロした動画流れてませんでした? つまりオリジナルのソースを日テレが持ってるから、彼等しかできない事だったわけで。

Lucky:

ですよね(笑) ムネオハウスのサンプリングされてるものと元の動画が一緒に流れているという。

モーリー:

著作元が反撃(笑)

Lucky:

反撃ですよね。最後アナウンサーが「こちらで画像を編集して作ったものです」って言ったのも、その辺もあると思います。

モーリー:

「こちらがそもそも著作権を持っていたものです」って言いたかったのかもしれないね。

Lucky:

主張したかったのかもしれませんね。

モーリー:

だけど、逆に言うと、職人さんの中にはもしかして仕事でAvidやAfter Effectsの編集やウェブデザイナーとか手掛けている人もいるわけで。最近のちょっと高度な方のVJソフト、例えばMotion Diveよりも上級ソフトになってくると、レンダリングオプションなんかあったりするんですよ。
だから、例えば動画をまるごと動いたままサンプリングして、それをダダダダダっという風に出すことも可能なんじゃない?

Lucky:

なるほど。じゃあそういう技術まで使えてかつサイズも抑えられれば、今までずっと言ってるブロードバンド配信ですね、それに載せてまた1つのブレイクスルーになると思いますね。

モーリー:

ブロードバンド配信でのみ可能になるオルタナティブなラジオというかテレビという事?

Lucky:

そうですよね。今まででしたら独立のミニFMみたいな世界が。ミニTVですよね。電波を使わないテレビみたいな感じになって。動画を中心とした。じゃあこの動画を見てまた書込みしたらリアルタイムなコミュニケーションが取れると。そういう形になっていくんじゃないかなと。それは凄い広がりが出てくるんじゃないかなっていうのは思うんですよね。

モーリー:

媒体が第一次の爆発、要するに社会に認知される、そしてそれによる目新しさの混乱。これが多分祭りと共に1回収束すると思うんですけど。その後でですね、一種の課題みたいなものが見えてくるような気がするんですよ。今WinMX中心ですよね。っていうのはmp3を載せるとデリートがかかるっていう。

Lucky:

そうですよね。Yahoo!のブリーフケースでも・・・

モーリー:

ヤフ鰤(笑)?

Lucky:

ヤフ鰤ですよね、所謂(笑) それも結構ヤバいみたいですよね。

モーリー:

Yahoo!は自分たちでカテゴリに登録しておきながら、メディアそのものは削ってるわけ?

Lucky:

そうなんですよね。だから担当してる人の差が出てくるんじゃないかなぁ。

モーリー:

あぁ分かった。下の方の人は「やれ!やれ!」で、上の方の孫正義さんに近ければ近いほど「けしからん!」と。

Lucky:

転送量がかかっちゃうっていう。今までのカテゴリ作ってリンク貼るだけだったら転送量はそんなにかかりませんよね。でもファイルを置いてそれをDLする、そのまま聴かれるとなると、転送量がかかっちゃう。そういう問題も出てきているんじゃないかなぁ、なんていう憶測は出てきますよね。

モーリー:

じゃあ、そういう次の物理的なインフラとかシステムのハードルが起こってきたときにね、そこに対して企業で手を挙げてくるところが出てくると思うんです。既に新しいリンクの中で、CD-R社が一個本社ホームページから僕のところにリンクしてるんですよ、ムネオハウス関連で[5]。それはAppleの「Rip. Mix. Burn」[6]ってあったでしょ。あぁいう感じ。「これからは新しい世代が自分たちでmp3を自在に使いこなすんだ。このムーブメントに乗り遅れるな。そこで我が社のCD-Rを買え」(笑)

*5 ・・・ モーリー氏のサイトへのリンクだったため、どこの企業がやっていたか確認取れず。
*6 ・・・ 2001年のAppleが展開したiTunes広告のキャッチコピー。参考: Wikipedia - List of Apple Inc. slogans

Lucky:

なるほど(笑) 販促に繋げようという形ですね。やっぱり商売ですから、お金につながる事を。こういうホームページ使った事で一番悩みの事は、どうやってお金を取るかっていうところで。ホームページは元々助け合いみたいなところから出てるんで、無料が当たり前。i-modeは逆に同じコンテンツなのに月額300円払わなきゃいけない。
そういうスムーズにお金が取れる仕組みができているのに、ホームページというかインターネットじゃ出来ない。そこのところを突きたいんでしょう。

モーリー:

infoseekのバナーを100回ぐらい見てる人いると思うんですよ今回(笑)[7] それって告知効果あると思う?

*7 ・・・ infoseekの無料HPサービス「iswebライト」を使ったミラーサイトが多かったため。同サービスは2010年10月で終了した。

Lucky:

どうでしょうねぇ。そういうのはあるものだと思ってるから、目に入らないから、広告効果としては非常に薄いと思います。

モーリー:

頭の中でモザイクかかっちゃってるんだよね(笑)

Lucky:

そうなんですよね。勝手に切った映像が見えるっていう。

モーリー:

そうするとね、ケーブルテレビの発想に近いのかもしれないけれども、例えば光ファイバーを敷く上でこういったシーンというのはプッシュするコンテンツに足り得るんでしょうか。それともやっぱり無法すぎるでしょうか。例えばNTTが見た時に。

Lucky:

あぁどうでしょうねぇ。ムーブメントとしてはすごいアンダーグラウンドな事かもしれませんけど、やっぱり楽曲を作ってそれを流してそのジャンルが盛り上がるっていうのは何にもオカシイ行為では無いと思いますし。企業が食いついてきて、じゃあ「良い子のムネオハウス」にして(笑)「みんなで儲けよう」という発想になるのもおかしくはないと思います。

モーリー:

ムネオハウス放題で月々1000円とかの光ファイバーサビス。

Lucky:

そんなサービスができるかもできませんよね、極端な話。

モーリー:

WAP[8]かなんか使った屋内ファイバー無線、みたいな?

*8 ・・・ 携帯電話のデータ通信方式、Wireless Application Protocolの事。参考: Wikipedia - Wireless Application Protocol

Lucky:

(笑) そうですね、そういう。あとは屋外に出た時も。

モーリー:

モバイルで車の中でも新幹線の中でもムネオハウスが聴けますとか(笑)

Lucky:

そんな感じで。それをメディアとしてどこかが一つ握って配信する。

モーリー:

吉本が?

Lucky:

そうですよね(笑) そうしたら・・・

モーリー:

吉本Yahoo!みたいに合併したりね。資金繰りの問題で。

Lucky:

それで儲かれば動くんでしょうね。ええ。

モーリー:

そしたらYBBじゃなくてYYBになりそう(笑)

--

モーリー:

ムネオハウスに関わっている当事者っていうのは、「2ちゃんねる meets マスメディア」ということで、非常に緊張感を感じていると思います。これが参加者にとっては大きな事件なんですね。
一方で国際社会、外の世界では、アラファトさんがピストルを持って議長室に立てこもってる状態で、凄いことになってますよね[9]。しかもそこにフランス人のリーダーが入っている平和団体が入って人の盾を作ってアラファトを守っているとか。それをイスラエル軍が威嚇発砲しただの、日本人もちょっと撃たれたとかそういうニュースが流れていて、凄いことになってるんですよ[10]
例えばそういう政党に属さない団体が、ムネオハウスにヒントを得て真似する可能性ってある?

*9 ・・・ 2001年よりイスラエル軍に議長府が包囲され、軟禁状態にあった。
*10 ・・・ 2002年3月31日よりISM/国際連帯運動のメンバー50名が議長府に入り人間の盾を形成。参加していた日本人女性がイスラエル軍の銃撃で負傷した。

Lucky:

どうなんでしょうねぇ。元々言ってるように政治的な意図の全くないパロディーのものなので。じゃあそれを利用してメッセージを載せようとなったときに、今まで聴いてた人はどんな反応を示すかっていうのが全然分かりません。

モーリー:

私の嗅覚みたいなもんなんですけど、ヨーロッパの人ってこういうのを使って与党を批判したり、イスラエルの問題を面白おかしく流すようなコラージュ、ムネオハウスの形式を真似た、でも意図は政治的な指摘あるいは糾弾みたいな媒体が流れたときに、面白がってワーって沸騰するような気がする。

Lucky:

その辺は国民性であったりとかお国柄の違いが出ちゃうんでしょうね。国情に不安がある、政治に対して民意で何か言いたいというときにそういう音楽を・・・

モーリー:

言わせてもらえない。アラブ圏だったら新聞の編集長が虐待されるわけですよ。ちょっとでも時の為政者というか支配者側に批判的な事を書くとすぐ焼き討ちにあったり銃撃されたり凄いわけね。熱いわけ。

Lucky:

ですからそういうときにムネオハウスのみたいな形で、アンダーグラウンドで批判するものであったりとかを世界に向けて流して、外から国を懐柔してもらうみたいな感じになるっていうのもあるかもしれませんよね。

モーリー:

ポルポトテレビ?[11]

*11 ・・・ ポル・ポト派カンボジア国内で行なっていた地下ラジオ放送になぞらえていると思われる。政権批判、UNTAC批判等のメッセージが流されていた。

Lucky:

ポルポトテレビで(笑) でもまぁ極端な話、ここまで考えている人ってのはモーリーさんぐらいしかいないんじゃないかって思うくらい、ムネオハウスに関わっている人は自分たちの祭りをしてただ消化してるだけのような気がするんですよね(笑)

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モーリー:

えー、日本社会は放送・報道はNHKを頂点として、電波はヒエラルキー構造があります。そして出版社、新聞側にも大手がいて、そしてマイナーがいて。あんまり違わない事を、ちょっと違うんだけども本質的に相容れないぐらいの葛藤というのは放送や活字媒体の中には無いんですね。だからある意味で日本スタイルなんですけど、みんなで示し合わせる。
例えば、与党に三党が寄り合い所帯で、お互いだいたいの事においては口裏を合わせる。この口裏を合わせる、つるむっていう方式が採用されているのね。で、何が言いたいかっていうと、そうすることによってメジャーを作り上げる。そしてそれぞれの媒体、報道であれ政治的な意思決定であれについて独占するわけですよね。そういう形態っていうのは日本社会のあっちこっちで定着してるわけだな。戦後五十年以上。
それに対してムネオハウスのスタイルっていうのは水平方式で、何がどう起こっても不思議じゃないし。加えてですよ、報道の独占、それは確かにチャンネルはいくつもあるしNHKと民放とで別れますよ。だけども事実上そっちで仕切っているものに対して、それをくすねてきて別の形に出し、それを延べ20万人の人が見たりするっていう事は、自分たちの意図を超えたところで独占に対する挑戦なんですよ。
その反動というか影響を考えた事ありますか?

Lucky:

私自身はそういう影響を考えた事は全然無いですね。ですけれどもこのムーブメントが広がっていくにつれて色んな事を考える人が当然出てくると思いますし。
私自体考えると、ムネオハウスというものはじゃあ何なんだと? と。最初はムネオさんの発言を中心に作ったものがムネオハウスと呼ばれたものなんですけど、だんだんムネオさんもメディアに出てこなくなって素材が無くなってくる。じゃあ素材の使い回しで、音楽的なクオリティの高いものができているんだけど、じゃあムネオハウスとしてはどうなんだっていうのが、私の悩みというか。だから音楽シーンとしてのムネオハウスなのか、何かの大きな運動、ムーブメントとしてのムネオハウスなのか、どっちなのか悩んでるんですね。

モーリー:

似たような立場に10年前ですけどパブリック・エネミーが立っていたのかもしれません。

Lucky:

ええ。パブリック・エネミーなんかも普通にラップをやってるだけのミュージシャンっていうのか、それとも反体制というか。今の政府であったりに対してずっとメッセージをずっと投げかけてる感じっていうのもありますしね。

モーリー:

スパイク・リーはまさにそういう意味で"職人"に匹敵する立場なのかもしれない。スパイク・リーが「Do the Right Thing」[12]ベッドフォード・スタイベサントというニューヨークの地区、郊外のちょっと貧しい部分で、黒人vs白人の暴動が起きるんですよね、ピザ屋さんで。そのときのサントラが「Fight the Power」だったんですよ。それから2年後ぐらいだったかな、「マルコムX[13]を録るんですね。今度は大きなお金を集めてきて。「Do the Right Thing」がヒットしたので。その後で社会的にアフリカ系アメリカ人の意識がグワっと高まって、ロドニー・キング事件があったときに、それをテレビが煽った事もあって、ロス暴動へと発展した経緯は覚えてますよね[14]

*12 ・・・ 89年公開。参考: Wikipedia - ドゥ・ザ・ライト・シング (映画)
*13 ・・・ 92年公開。参考: Wikipedia - マルコムX (映画)
*14 ・・・ 参考: Wikipedia - ロス暴動

Lucky:

ええ。

モーリー:

変な話、何年か前の映画のサントラだったのにも関わらず、ロス暴動の間中、黒人系のFM曲は「Fight the Power」を流してたらしんです。

Lucky:

それと、本当同じようなケースになってもおかしくないだけのコンテンツの洗練された魅力っていうのはありますよね。この曲自体が盛り上がって政治意識が上がる人もいるかもしれませんし。また今の政治家、国会に変な動きがあったときに、聴いてる若い世代・・・ 多分10代後半から20代の方が聴いてると思うんですけど、そこが政治に対してモノ申すっていう。

モーリー:

30代も一杯聴いてるような気がする。書込み見てるとそんな気がする。

Lucky:

(笑)

モーリー:

だって家族サービスしてるんだもん。車を洗いながら聴いてるとか。

Lucky:

そうですね。私ももう30代に近いんですけど(笑) 政治意識というのにまで繋がる可能性もありますよね。逆に全然繋がらないかもしれない。

モーリー:

あのね、ここで僕が気付かされている事なんですけど、まさにさっきLuckyさんが仰ったお国柄の違い、ヨーロッパだったらこういったものはもっと激しい政治性を帯びて、それもジョークとして流通する。それに対して、日本の場合は、あくまで政治性が無いんだと主張するけど、すればする程マスコミが政治的な、社会的な事件へと持っていく図式もちょっと見えてますよね。ところが思うにね、日本のお国柄とやらが一番異端的なんじゃない? 珍しいんじゃない?

Lucky:

ですね。「世界の常識は日本の非常識」って言われるくらいの。日本の、良いように言えば独自性ですね。

モーリー:

つまりこういった政治パロディーネタが「政治性がないんだ」「社会性が無いんだ」って主張する根拠そのものが日本の特殊性なんじゃない?

Lucky:

ですよねぇ。こういうもので茶化して政治家が悪いから辞職しなさいっていうムーブメントに持って行きたい、と思わない方がカッコイイと思って作ってるっていうのもあるんですよね。

モーリー:

スカしたい、と。

Lucky:

ううん・・・

モーリー:

それがある意味でパブリック・エネミーのスタンスと、環境も違うんだけど、発想の原点が違う気がします。

Lucky:

そうですね。やはりもうパブリック・エネミーと一緒に考えるっていうのは絶対無理でしょうね。根本的な、黒人として今まで生活してきた中で受けた・・・

モーリー:

陵辱っていうか。絶対良くならないもん。黒人の生活って。殆どの人にとって。

Lucky:

それを我々日本人で、

モーリー:

ぬるま湯(笑)

Lucky:

不況だって言ってもご飯食うお金には困らないし、快楽を求めるものはそこら中に転がってるし。

モーリー:

ですよね。

Lucky:

それだけの差はあると思います。ですから私は見えない階級で縛られてる人間だったらこれを政治運動の一つに使って何かやってやろうっていう発想になるかもしれませんよね。

モーリー:

レゲエにしても、ジミー・クリフにしてもボブ・マーリーにしても。

Lucky:

ええ。その辺も自分の今までの階級社会みたなところから解き放たれるために音楽を使って行ったわけですよね。

モーリー:

ヒップホップにしろ何にしろ、ハウス・・・ デリック・メイでしたっけ? 誰だっけハウス始めた人? ゴメン、あんまよく分からない(笑)

Lucky:

私もちょっと・・・(笑)

モーリー:

あぁん、みなさんゴメン(笑)
要するにビートものの、テクノ全般を扱ったドキュメンタリー映画を去年観たんですけれども、その中で出てきたのが、デトロイトの生みの親側の人が、80年代のデトロイトは荒涼たる風景でアフリカ系アメリカ人にとっては全くノーフューチャーな世界。未来が良くならない。だから別のビートの、ちょっとサイエンス・フィクションな世界へと逃避したい。その衝動が初期の機械的なビートには凄く共鳴しあってたんだってことを言ってましたよ[15]

*15 ・・・ 98年公開のドキュメンタリー映画『Modulations』の中でホアン・アトキンスデリック・メイがこの旨の発言をしている。

Lucky:

なるほど。そういう押さえつけられたものとビートがクロスオーバーしたときに、凄い物が出来上がる、ブレイクするっていう。ムネオハウスに対してはそれだけの一緒に共鳴できるような物ってのはなかなか無いと思うんですよね。

モーリー:

共通の「やられた!」っていう感じとか。悔しさみたいなのが。

Lucky:

停滞感、濁った何かが。「これを解き放ったら我々は素晴らしい世界に行けるのに」っていうような感覚も無いんですね。やはりダジャレのお遊びですから。ハイ。

--

モーリー:

Luckyさん最後に、ムネオハウス、お祭りが2日後にあるんですけど。そこをクライマックスとして、その後どうなったら良いとおもいますか? 個人的に。

Lucky:

個人的には今回イベントに関わった人以外がシーンを盛り上げていく。イベントをやるにせよ。あとは音楽に還元する、ですよね。今までハウスミュージックって言われるものであったりとか、テクノと言われるものを耳にした事がなかった人が、こういう形で耳に入って来てるわけですから。テクノの人口を増やすっていう意味でも良いムーブメントになったんじゃないかと思うし、これからもなる可能性が非常にあると思います。

モーリー:

テクノにしろヒップホップにしろ、「マルコムX」を含めた白人黒人の葛藤なんかが背景になって育ったっていうそもそも発祥がありますよね。レゲエなんかも、一説によるとね、AM放送でルイジアナやテキサス周のカントリーが、ジャマイカは、キューバの横にある島なんですけど、そこで入ると。それを真似しているうちにレゲエが出来ちゃったらしんですよ。裏打ちで。そこに思想性を持ち込んだ時点で爆発して独自の音楽になったんですね。
で、僕が拘っているのは、そもそもヒップホップ、テクノ、ハウスの動きっていうのは、そういう社会性、階級の問題、矛盾に対して解放を求める精神的な運動の面があるのね。なのにヒップホップやハウス、テクノの、形の、耳障りの部分をスコーンとそこだけ衣のように入れて、そこに政治家をコラージュして「政治性はありません」って言ってるわけ?

Lucky:

うーん(笑) やっぱりネタですよね。今まで代議士さんでキャラクターの立った、ハマコーさんであるとか沢山いたんですけど。やっぱり「ムネオハウス」というものが出た、そこがもう全てなんですよね。ですから今は一人歩きしてるところがあるんで、じゃあこれを色んな形の音楽とごった煮に並べて色んな物から昇華されて「ムネオハウス」というジャンルが出来てもおかしくないですし。そういう伸び方ってのもあると思います。

備考

記事投稿日: 2013年4月4日
音源を提供して頂いた皆様に深く感謝致します。