2002年4月1日公開「季節の外でPro」ムネオハウス特集第6回(ゲスト: m39) インタビュー全文

11年前のこのインタビュー音源の文字起こしになります。

前書き
  • 編集点、楽曲の挿入箇所に"--"で目印が入っています。
  • 可読性を高めるため、句読点の付加、重複表現の省略、体言止めの修正等の変更が加えてあります。
  • 脚注は2013年3月時点の情報に基いています。
  • インタビューを受けた方のプライバシーに配慮し、音源の直接公開は当ページでは行いません。

モーリー・ロバートソン (以下、モーリー):

今時癒される喫茶店なんて、少ないよな。東京に数少ない、しかも品川駅のすぐ近くにあるという癒され憩いの場所にて、m39さんを取材いたします。
ムネオハウス、急激に進んでいますね。今どうなってますか?

m39:

どうなってるというか・・・ まぁここ数日新曲がガンガン増えて、ジャケットもガンガンできて、いわゆる職人さん達がもう大々的に盛り上げている。
あとまぁ、インターネットでニュースサイトが取り上げたり、最近だとラジオやテレビなどのマスメディアも取り上げつつある。
もう単なる職人のお遊びから始まったムーブメントが世間を巻き込んだ物凄い事になってる、そういう状況ですね。

モーリー:

あの、例えば代議士の方で、このストリームも含めてインターネットを初めて体験しておられる方がいると思うんですよ。どういう風な印象を受けてると思いますか?

m39:

どうなんでしょうねぇ? まぁムネオさん本人はまぁ見ててそんな良い感じしてるかどうかってのは分かんないですけど。
ただ今回ネタにされてない代議士の方が逆に「自分もなんかやったらこうされるのかな」っていう変な危機感は持ってるんじゃないんですかね。

モーリー:

(笑) その、彼らのね・・・ まぁ例えば代議士さんが「自分の名前でハウス作られたくないなぁ」と恐々としている、そんなイメージがあったとしてね、彼らのそういう恐れ方というのはこのムーブメントの趣旨とはズレるんじゃないんですか?

m39:

そうですね・・・ まぁ趣旨は我々はただ単にそのムネオハウスっていう言葉とアシッドハウスっていうのをもじったもので遊んでるだけ。それで政治家が、彼らがどう思ったとかで、我々は関係ない話で。我々は我々で楽しくやってるだけのことですからね。

モーリー:

その「我々」という人たちが、お互いに最初から合意がね、ある程度広く有る部分でやっていた部分が、こう外に向かって窓というのか、向こうから入ってくるものでもありこっちから出て行く窓でもあるんですけど、そういったものが開かれてしまった感があるんですけど。

m39:

そうですね・・・ そこまでこっちの、要は職人やその曲を聴いて楽しんでる側は、そこまで深く考えてやってるかどうかってのはまた別問題ですよね。
だから今回特にマスメディアにどう取り上げられるかってのも興味あるところなんですけど、楽しんでる側と、いわゆるネタにされてる側、それを取り上げて報道する側の思惑がみんな三者三様でバラバラというのが今回のムーブメントの中で面白い部分かなと思ってますけど。

モーリー:

大手のテレビで取り上げらているのを見て、例えば今回当事者の議員やその近くにいる人、例えば政策秘書なんかがね、「なんかすごい事なってる」って驚いて報告するという、こういうパターンが考えられるんですけども。なんていうのかな・・・ 彼らも一種の驚きだと思うんですよ。「なんでこんなものが」「済んだ事なのに」(笑)

m39:

ずっと続いてる(笑)

モーリー:

それで逆に、2ちゃんねるのスレッドの中でこれに関わっている人もマスの露出をすることによって、例えばTBSなんかが取り上げたときにね、「それは不本意だ!」っていう風に、かなり自分達の思惑と違う方向にこれが動いてる気がするんです。
どうですかその辺?

m39:

どうなんでしょうね・・・ TBSがどういう思惑で今回のものを取り上げたかっていうのもちょっと私は理解できない部分があるんですけど。
まぁ、そのいわゆるリスナーというか、2ちゃんねるからしてみれば、もうその「ムネオ"ラップ"」という紹介のされ方はいかがなものか、という感じはありましたけど(笑)

モーリー:

コーヒーが来たのでここで休憩します。

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モーリー:

ムネオハウスはマスコミに接することで動揺したり変質したりしていますか?

m39:

えっとですね・・・ 一部の人は変質してるようなところも見受けられますけど、基本線はもうそのままサイトにも書いてある「パロディーとアイロニー」。もうこれだけは、これは崩れてないですね。あともちろんこれは崩れちゃいけない事であると思ってますけど。

モーリー:

「パロディーとアイロニー」、ある種これを確信犯的に、ギリギリまで作者やスレッド、関係者達は・・・ ハッハッハッハ(笑) 持って行ってるような気がするんですね(笑) で、こう今の押している限界というのは、マス社会、マスメディアね、著作権をとやかく言う人、肖像権、名誉の問題を言う代議士の方、その方達の許容量を既に超えているでしょうか?

m39:

そうですねぇ・・・ もともとアンダーグラウンド的に発生したものが、もうマスメディアに出た時点である意味もう許容量は超えてるとは思うんですね。
2ちゃんねる関係で言いますと年末にあった「田代まさしニューズウィークの表紙にしよう」[1]。あれも結局マスメディアに紹介されて「組織票があった」みたいな形でニューズウィークから潰された形になってますけど。最終的にアンダーグランド的に発生したものは、マスメディアに潰されるようなのが今までの伝統と言ったらちょっと言い方オカシイですけど、そういう流れありますよね。
ただ今回は面白いのが、その、今週末ですか、イベントありますけど。それがもうムーブメントのピークになると思うんですけど、そこのピークでどデカい打ち上げ花火ってのを作って、その後は真っ白になって消えてしまうものなのか、細々と生きていくものなのか、そこは私はちょっとまだ先の事は分かりかねますけど。
まぁなんにせよこのムーブメントでマスメディアに紹介されて盛り上がった中でイベントがある、っていうのはスゴイ面白い流れじゃないかなとは思っています。

*1 ・・・ 参考: Wikipedia - 田代祭

モーリー:

更に、作品がですね、アップロードされたりファイルが転送して共有されたりしてますね。そうすると、元々曲を作った人なり、今まではどっちかって言うとイベントの主催者側にいた人が「さぁこれで祭りは終わったんだ」と言っても、その人達から今度は友達へとどんどんと拡散していく限り、ファイルは劣化しないですよね

m39:

そうですね。

モーリー:

ムーブメントは勝手に続くという可能性は考えられますか?

m39:

そうですね。それも考えられますけど、個人的にはイベントでどデカい打ち上げ花火で終わって、で何事も無かったように終わってしまうのが面白いんじゃないかなっていう気はしてます。

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モーリー:

初期のスレッドの参加者へのインタビューでも繰り返し訊いた内容をここでm39にもお訊きたいんですけど、ムネオハウスムーブメントの危機管理は大丈夫なレベルですか?

m39:

正直言って「分からない」っていうのが私の今の気持ちですね。
先日イベントのいわゆるスタッフといわれる方と打ち合わせ、飲み会あったんですけど。結構スタッフやるような人は元々が、ちょっと目立ちたいと言ったら言い方おかしいかもしれませんけど(笑)、そんなところがあって。「もしテレビなり何なり来るんだったらどんと来い!顔出してインタビュー受けてやるよ」みたいな、けっこうメジャー感ある人が沢山いる感じを受けたんですね。
で、そういう流れがある。まぁその人達は危機管理と言ったところで「自分たちが楽しんでいるんだ。それで文句あるか!」っていうところも若干あるとは思うんですよ。

モーリー:

「文句あるか!」と開き直る危機管理。

m39:

ですね。ただまぁ現実問題「文句あるか!」と開き直ってオッケーなのかどうなのか。もちろん法律上いろんな問題あるのは、引っかかりそうなのはもう目に見えてるわけですし。
ただ元々がアンダーグランドなんで「そんな事で正直オドオドしてやってられるか」っていうところもあるんじゃないかな、っていう気はするんですよね。

モーリー:

あの、「祭りが終わればきっとまたアンダーグラウンドに戻れるよ」そういった意見もなんか見え隠れしている気がします。スレッドの中には特に。
一方でマスメディアにここまで露出をされ、これからももっと露出されると思うんですが、そうなってくるとアンダーグラウンドに戻るも戻らないもなく、変質してしまうんじゃないんですか?

m39:

そうですね・・・ 変質というか、先程も言いましたけど私の理想はイベントの後になくなる。なくなるっていうのはオカシイですけど、まぁ祭りの後の静けさ、その知る人ぞ知るみたいな形で細々続くのが理想といえば理想かなっていう気がしますね。

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モーリー:

m39さんが今まで出てきたムネオハウスの動画及び音楽の中で一番好きだったのはどれですか?

m39:

一番好き? やっぱり初めにハマったというか気に入った曲という意味では「dj battle」。あれがまぁネタ的にタイムリーだった事もあって、あれがハマリましたね。でまぁ後はもう、有名所で言えば・・・ ム・・・

モーリー:

「MURU-CORE」(笑)

m39:

ですね(笑) 初期の曲は曲のクオリティが云々っていう、短いとか色々話が出たりしてますけど、やっぱり初期衝動的な部分が一番詰まってるのは、やっぱり1stアルバムの曲なんじゃないかっていう気がしますね。

モーリー:

なんか物凄い速さで5年間で解散する寿命を持ったカリスマティックなバンドの初期からブレークする瞬間を見ているような、妙な4コマ漫画を見てる感じしますね。

m39:

そうですね(笑) もともとは「アルバム3枚で終了」ってという話だったのが、いつのまにかもう既に8枚目ですからね。もしかしたらイベントまでにアルバムがまだ2枚、3枚できるのかなっていう気もする勢いですよね。

モーリー:

m39さん個人としては、曲が初期衝動の、まぁ言ってみれば素人っぽさ? 無形の状態へと逆戻りしてほしいですか? もっとプロで洗練されたものが出てきても良いですか?

m39:

アリアリですよね。そのバランスがとれているところに行っちゃっても良いし、曲と凄く融合してるものが出てきちゃってもいいし、曲とコラージュっていうか声ネタがバラバラなんだけどとりあえず面白い、笑える。それは楽しみ方で色々あって良い気がしますね。

モーリー:

マスメディアの側の人は・・・ 自分たちが放送した報道した元の素材となった声ですよね、議員の声。それからムネオハウスムーブメントを断片的に取り上げたテレビやラジオ。こういったものが再利用、サンプリングして、次の曲に組まれる、組み込まれれる。そして場合によってはアナウンサーやコメンテイターの声も次の曲として入ってる。こういう状態にかなり驚愕すると思うんです。

m39:

あぁ、はい。

モーリー:

これから先、そういう方向にもムネオハウスは突然変異し得るんでしょうか。

m39:

実際にもうそういう曲もありますからね。「声の周波数がどうのこうの」っていう歌ってる曲もありますし[2]。でもそれはさっきも言いましたけどアリアリで。ネタとしては面白ければオッケーと、いう感じでは無いでしょうか。

*2 ・・・ 「180Hz to 330Hz(4th-01)」の事。

モーリー:

マスコミ側のフィードバックを想定せずにやっている雰囲気なんですよ。あのm39さんのこれまでの言い方から僕が察するんですけど。マスコミ側がどう来るのかは出てきた後で無いとわからない、ってことなんですけど。彼らとのやり取りというかあるいはプレッシャーがよりこの先具体的で生々しくなってくるような気がするのね。
そういった時にムネオハウスはそれによって変わりますか?

m39:

そこまで続くのかな? っていうのが正直なところですね。まぁ権力に潰されてしまうっていうのはちょっと終わり方としてはスゴイ寂しい終わり方なんですけど・・・

モーリー:

カッコイイんじゃなくって?(笑)

m39:

(笑) そうですねぇ。まぁでも伝統的には潰されてますよね。ただ潰されるんであったら、イベントが潰されちゃうような感じの流れですよね。もうここまで来たんだったらイベントだけは何としてもやりたい。イベントした後はもう潰されても仕方ないかな、っていう気はしてるんですけど。

モーリー:

イベントだけは守りたい。

m39:

守りたいって、そんなカッコイイもんじゃないんですけど。やっぱ祭りは最後に神輿かついでワショーイってやってナンボだっていう。それだけですね(笑)

備考

記事投稿日: 2013年4月1日
音源を提供して頂いた皆様に深く感謝致します。