2002年3月25日公開「季節の外でPro」ムネオハウス特集第5回(ゲスト: Shibu) インタビュー全文

11年前のこのインタビュー音源の文字起こしになります。

前書き
  • 編集点、楽曲の挿入箇所に"--"で目印が入っています。
  • 可読性を高めるため、句読点の付加、重複表現の省略、体言止めの修正等の変更が加えてあります。
  • 脚注は2013年3月時点の情報に基いています。
  • インタビューを受けた方のプライバシーに配慮し、音源の直接公開は当ページでは行いません。

モーリー・ロバートソン (以下、モーリー):

どうせならガラの悪い新宿で人に話を聞きたいな。「季節の外でPro」、今日はムネオハウスの傍観的な立場にいる、ご自身も表現者でいらっしゃるShibuさん、そしてお友達の先輩、そしてShibuさんの妻を交えてお話しをしたいと思います。

Shibu:

宜しくお願いします。

モーリー:

あの、ムネオハウスに接したのはいつが最初でしたか?

Shibu:

あのスレッドが建ってすぐ位ですかね。たまたま別のニュース系のサイトで知って。

モーリー:

1週間くらい前?

Shibu:

1、2週間前ですかね。

モーリー:

それでその後曲は何十曲ぐらいになってます?

Shibu:

今・・・ 僕が知ってる限りだともう60曲近いんじゃないですかね。

モーリー:

かなりの速さで増殖中ですよね。

Shibu:

ええ。やっぱり見ている人間が多い分、そうだと思うんですよね。

モーリー:

今色んな曲聴いてるんですけど、今まで結構繰り返し聴いたのっていうのはどれですか?

Shibu:

繰り返し聴いたのは・・・ やっぱり1番笑ったもので「MURU-CORE」っていう奴で(笑)

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モーリー:

完成度みたいなものと時事性が絶えずバランスになる、って言うことをShikarabaっていう作曲の人が言ってたんですけど。今のところShibuさんが期待しているのは完成度、音の良さの部分ね、それと時事性、今起こってる事をそのままフォローしてくれるってことの二つがあったときにどっちが大事ですかね?

Shibu:

僕としてはやっぱりネタ重視なんで、逆に曲の完成度の方が僕としては興味ありますね。

モーリー:

それで、曲の完成度に興味がある人として聴いたときにムネオハウスはやっぱり魅力を持ちますか?

Shibu:

そうですね、あのままイベントでかけてもそのままみんな踊り続けてくれるんじゃないかと。それを知らない人達の普通のイベントでかけても、全然違和感無くいけるんじゃないかと。

モーリー:

良い曲が多いってことですね。で、曲の完成度についてもう少し聞きたいんですけど。お互いに誰が作曲家っていうのを把握している人っていうのは何人かしかいないですよね?

Shibu:

極一部じゃないですかね、今回。

モーリー:

するとね。完成度の高い、比較的偏差値が高いとでも言う曲、結構あるよね。そうすると、プロが作ったとしか思えないようなの結構あるんですよ。

Shibu:

あぁ。

モーリー:

それで一部の人は、多分あんまりそこは知らない人だと思うんだけど、「良くてもセミプロ、アマチュア中心なんだから問題は無い」と。問題が無い・・・ 時事性のネタですよね、パクリの部分と、著作権上、名誉の問題が無いとい事の根拠として「どうせアマチュアが大学生レベル作ってんだからいいじゃん。こんなのどうして真剣にするの」なんて言ってるんですよね。
実はどう聴いてもプロが作ってるんですよね。

Shibu:

(笑) それは凄く思います。書き込みなんかを見てても、本当に学生やらそういうのが多いような・・・

モーリー:

子供さんやら

Shibu:

(笑) もうその通りなんですけど。実際作って頂いたものを聴くと「いやそうじゃないだろう(笑)」という気がしてならないです。

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モーリー:

オートバイが通っています。今朝、3月24日の朝のテレ朝のワイドショーで、僕は見てないんですけど、辻本議員が出て実際に不透明なお金の流れがあったと認めちゃったみたいなんですよ。それに連れて、明日国会、月曜日っていうことで、多分大騒ぎになると思うんですね。これはある意味で鈴木宗男議員へのフォーカスをそっちに寄せていって、議員辞職勧告の問題を棚上げするという作戦も当然与党としては入ってくると思うんですけども。
それに先駆けてですね、今夜日曜日の夜に、J-WAVEで一部かかるんです(笑)

Shibu:

見ました(笑)

モーリー:

そういう今の状況はどう思いますか? 今色んな要素が出ているんですけど、これってどこへ流れていくと思います?

Shibu:

多分、今ムネオハウスで盛り上がってる人達は、明日記者会見をするとなったらパソコンやらテレビの前でいつ放送が始まってもOKなように、多分ネタとして備えている以外にはそんなには政治力は強くないと思うんです。

モーリー:

あの、何人かリーダーシップを採ってる人がいますよね。私見てて、卓球さんに依頼するっていう話が出た段階で[1]、「ほらね、僕が危機管理って言ったでしょ」って部分が出てきたんですけどね。
これ自分の意見を言いますけど、主催者が自分の連絡先付きで、そういう有名なメディア側の人に「これを何とかお願いします」と出した段階で責任者がはっきりするんですね。ということは標的がはっきりするから、これを快く思わない法人あるいは党がですね、その人を狙えばそれで済むって事になるじゃないですか(笑)
つまり顔を出すことで自分をとっても弱くしちゃうのね。顔が出ていない名無しさんであるからこそ強みを持っているムーブメントが、「有名な人に作ってもらおう」「どこかでちゃんと出版しよう」「誰かに出してもらおう」みたいにそっちへ依存心が出てきた途端に、自らのパワーを貶めることになるのよね。凄い矛盾を感じて。

*1 ・・・ 発端はumai bow氏の書き込み。本人は半分本気半分ネタつもりだったようだが、ベタに受け止められたためスレッドは荒れた。参考: 石野卓球に曲を作ってもらおう

Shibu:

それも思いますよね。僕も実際、そこで仲間内で楽しんでれば良いのに何故そこで・・・

モーリー:

どうして形を求めるんですか?

Shibu:

なんででしょうね? だからどうしてああいう風にメールが行ったのかよく分かんないんですけど。まぁこれは見守っとこうかな、と。

モーリー:

多分、「自分たちは匿名である」と。それが、なんていうのかな、すごい微妙だと思うのね。匿名の人達が匿名のパワーで盛り上がって、それが現実のイベントへと流れ込んで、しかもマスコミから既に取材が入ってるという状態で、やっぱり凄いことだとは思うんだけども。
あと半歩間違えたら舞い上がっちゃうんだよね。で、芸能人化しちゃうんだよね。

Shibu:

そうだと思います。

モーリー:

ワイドショーなんかが追いかけるときでも、容疑者であれ疑惑の方であれ、ポジティブであってもネガティブであってもその人がタレント化してくっていう面、無いですか?

Shibu:

タレント?

モーリー:

タレントとなっていく面。

Shibu:

あぁ、あると思います。

モーリー:

メディアとの関係性の中で。

Shibu:

うんうん。結局メディアの煽りみたいなのがあって、それに伴って普通の芸能人もいつの間にかお笑いやバラエティに出ているような。そういう風な。

モーリー:

そういったメディアの手法というかメディアの権力のあり方はね。青いペンキがあって黄色いペンキがあって白いペンキがあって、それをシンナーに入れて混ぜると全部グレーになるじゃないですか。メディアってそういうところを持ってるんだよね。

Shibu:

あぁ。

モーリー:

タレントなのか議員なのかこの際関係無くって、とりあえず瞬間視聴率へと還元されていくって言うんでしょうかね。

Shibu:

そうですねぇ、うーん・・・ 瞬間視聴率が爆発的に高かったからここまで広がったんだと思いますね、このムネオハウスは。

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モーリー:

Shibuさんがムネオハウスを聴いて、一番満たされる部分って一体何でしょう?

Shibu:

えっと・・・ 本当に笑いなんですよね。出だしから「ハッハッハ」と笑わしてくれる部分が一番で。でもそのまま普通に流してると曲としても聴けて両方とも満足できるんですよ。普通のアーティストのCD買っても曲としては良いと思うんですけど、笑いはそこまではこみ上げてきませんからね。
その両方を兼ね備えている部分がすごく僕は好きです。

モーリー:

そのインパクトが直接的であるという部分以外にですね、これ非常に現在進行形の「媒体」ですよね、ムネオハウス

Shibu:

(笑)

モーリー:

「媒体」だと思うけど。

Shibu:

そう捉えるのもありかと思います(笑)

モーリー:

曲がどんどん増えていく事に対する期待も強いですか?

Shibu:

そうですね。でも流石に最近はもう新曲のアップの率もだいぶ下がってきて、職人さんと言われている人達も少しは落ち着いて見守ってる立場になってるのかなと思って。

モーリー:

そういう落ち着いた頃に誰か勘違いして「石野卓球に持ってこう」とか言い出したんだ。

Shibu:

そうなんですよ! そこちょっと間違ってる。

モーリー:

だからひるんじゃダメ。職人は手を緩めずにもっと危ないものをもっとパンクに出せ、と。そういう事になってくるのかな。

Shibu:

そうすればもう少しピークも長続きして、なんとかイベントぐらいまで持つんじゃないかと思うんですよね。

モーリー:

(笑) ちょっとはしたない言い方をすると、ティーンエージャーが成熟した女性を喜ばせてやるんだと言ってのしかかった。1回終わっちゃった。で自信が無くなった。そんな感じしません?(笑)

Shibu:

(笑) うーん、どうでしょうね・・・ でも1回終わった感はありますね。軽く今タバコに火を付けようかなっていう部分ですかね。「さて、どうしようか」と。

モーリー:

中年の強みはね、その時に上手く引っ張り方を・・・ 商売で言う落とし所ですよね。

Shibu:

それはテクニカルな部分ですよね。

モーリー:

まぁテクニックかもしれない。
あとはね、精神構造だと思うのね。マスコミに向かい合うときの危機管理。僕としては独特の言い回しのつもりで言ってるんですけど。要するに、マスコミに関わるとみんなが当事者になってってフワーッと舞い上がっちゃう。で、自分が匿名の仮面であれ、ハンドルネームがテレビで紹介されたりした場合ね、そうすると自分にステータスが身について芸能のオーラを身に纏っちゃうんですよ。そのときに蝕まれちゃうの。何やってたか分かんなくなるんですよ。「自分が有名なんだ」って事が先になっちゃう(笑)
それで今度は有名さにしがみつこうとしてウケそうなネタを狙い始めて、それでアウトなのね。失速して終わっちゃう。いかにして我慢比べができるかなのね。

Shibu:

それは僕もそう思います、非常に。

モーリー:

今、1回その、ラクダのコブがシュルンと、小休止している状態。もしかしたらこれは職人達がより完成度の高い気合いの入った曲を作っているのかもしれないけれども。これから4月5日のイベントまでに、あと10日くらいですかね、その間ジワジワと本格的に盛り上げていくとしたらですね、どういうやり方というか要素が必要になってくるでしょう。

Shibu:

僕は、ずっとこう見守ってきてる立場としては、ムネオさんが最近テレビにも出てこなくなってネタも枯渇気味なんで、次の辻本さんと他のネタを合わせて、曲を作っていくだけじゃなくて別の新しいもので表現くれればなんとか10日くらいは持つんじゃないかなと思いますね。

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モーリー:

言ってみればムネオハウスのスレッド、掲示板の書き込みの連続なんですけど・・・ 何ていうのかな、書けば必ず参加できるわけですよね。
例えば、テレビの番組のように予めオーディエンスなんだけどバイトだったりした人達が笑ったり拍手したりするっていうのと全然違いますよね。障子一枚の向こうに本人が、作曲者であれ僕であれ、いるわけなんですよね。で、ストリーミング番組を聞いて反応したら、次の日は自分も出ている。
非常に近いんですよ。

Shibu:

近いですねぇ。だからある意味これは初めての書き込みみたいな感じなんでしょうかね、モーリーさんに対する。

モーリー:

書き込みとして関わって。声で書き込んでる感じ?

Shibu:

そうですね。そうしたらレスポンスが返ってきて。「あ、こんな風に返事が返ってくるんだ」と。これから、実を言うと本当はもっと書き込みまくるかもしれません。

モーリー:

Shibuさんの声を聞いて、なんていうかな、比較的今までスレッドでは匿名に近い感じだったんですか? あんまり書き込んでらっしゃらなかったんですか?

Shibu:

ほとんど書き込んでに無いですね。ゼロに近いです。

モーリー:

じゃあROMをしていたShibuさんが、例えばこのストリームでみんな聴いてるわけだな。時間差で、オンデマンドでね。24時間聞ける状態になっているから。
そうすると今度はShibuさんがサブジェクトになってる。それをまた別のROMの人が「あの人は手を挙げてああやってもう出てる」と。どうなるんでしょう?

Shibu:

どうなんでしょうねぇ。でも他にこの後に手を挙げてくる人がいるかと思ったら・・・ たまたま今までインタビュー受けていた方はオーガナイザーさん達やクリエイターさん達なんで、だからそろそろ・・・
ちょっとイヤらしい話ですけど「見てる人達の話も入れたら面白いんじゃないかな」って自分的に勝手に演出してるんですよ(笑) こういうのを入れた方が次に繋ぎやすいんじゃないかなぁと。

モーリー:

じゃ、インタビューを受けることで、却って能動的な、何か見えない布石を置いてるのね。

Shibu:

そうですね。イベントでも盛り上げ過ぎても、ずっとアゲ過ぎてもみんな疲れちゃうんで。手を上げ続けても疲れちゃうんで。

モーリー:

そうですね。

Shibu:

手をこう降ろさしてあげる、休ませてあげる部分も必要だと思うんですね。僕がその部分になれたら。あっ、カッコイイ俺(笑)

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備考

記事投稿日: 2013年3月31日
音源を提供して頂いた皆様に深く感謝致します。