2002年3月22日公開「季節の外でPro」ムネオハウス特集第4回(ゲスト: 宮大工) インタビュー全文

11年前のこのインタビュー音源の文字起こしになります。

前書き
  • 編集点、楽曲の挿入箇所に"--"で目印が入っています。
  • 可読性を高めるため、句読点の付加、重複表現の省略、体言止めの修正等の変更が加えてあります。
  • 脚注は2013年3月時点の情報に基いています。
  • インタビューを受けた方のプライバシーに配慮し、音源の直接公開は当ページでは行いません。

モーリー・ロバートソン (以下、モーリー):

雨の中桜満開になってしまった東京(笑) 恵比寿ガーデンプレイス、洒落たところ。上から見るとモバイルがぶら下がっていていつ落ちるのか、そして目の前には紫陽花っぽい鉢植えが、S字結腸のような形で並んでいて、あっちには多分人口の泉が、噴水がフワーっとこの一日中ガウスノイズの中で皆さん憩っておられます。目の前に見えるのは巨大な恵比寿ガーデンプレイス。この中には世界のお金を動かしている屈指の、かつてのワールドトレードセンターにも本社を置いていたような証券会社がズラリと並んでいる。
そんな非常にリッチな、周り中が緑と高層ビルに囲まれた恵比寿ガーデンプレイスで、宮大工さんのお昼時間にお邪魔いたしました。宜しくお願いします。

宮大工

宜しくお願いします。

モーリー:

あの、ムネオハウス、今朝方にかけて辻本さんのサンプルなんかが入ったものが3つぐらい追加されていましたね。

宮大工

ハイ、そうですね。

モーリー:

結構早く。

宮大工

そうですね。結構早く出てたみたいなんで。みんなそういう時事ネタは取り入れて、更なる広がりというか。聴いてるユーザーとしては凄い楽しみな感じで広がってると思うんですけど。

モーリー:

あの、ミュージシャンや・・・ なんて言うんでしょう作ってる人や聴いてる人というのは、これによって、日々の最前線のニュース速報をかなり見るようになってると思います?

宮大工

ま、そうだとは思うんですけど。でも多分クリエイティングしている人間ってのは、多分昔からそういうめざといニュースを見つけてくるタイプの人間なんじゃないかなと僕は思ってるんですけど。ただ、それを聴いた人間は多分それで興味を持って番組を見てると思うんですよね。

モーリー:

私実はね、今回のその鈴木宗男議員に関する国会での騒ぎ、だんだんバラエティ化していった辻本さんとのやり取りっていうのは、全く見も聞きもしていなかったんですよ。ずっとなんか他のところにばっかり目が行ってて。それでムネオハウスが出てきて、サンプルとして確認したときに「あぁ、これがムネオさんって人なのか」っていうか。逆に僕は作品で教えられたんですよ。

宮大工

僕の場合は政治に興味があったわけじゃないですけど、わりとテレビをつけっぱなしにするのが好きで。ちょっと2年くらい前から、例の2ちゃんねるの中では、割りと鈴木宗男っていう人は強い個性で人気があったというか、変な意味で注目されてたんですよ。

モーリー:

もう2年も前から?

宮大工

2年位前から。

モーリー:

もうその時は例えばどっかの週刊誌によるスッパ抜きかなんか、既に始まっていたんですか?

宮大工

いや、それは全然無かったんですよ。でも今出てきている情報はほとんど2年前の時点で匿名の方が全部、例えば「鈴木宗男が官僚を殴った」だとかっていう話は全部出てたんですよ。

モーリー:

逆にそしたら今回雑誌が鈴木宗男さんに一番最初に飛びついたときっていうのはね、いわゆるガセネタ覚悟で2ちゃんねるなんかをザーっと探していた記者もいるんでしょうかね?

宮大工

多分そういう方もいらっしゃるとは思うんですけど、多分そこで出てくる情報、今出てきてる情報っていうのは昔から御存知だったと思うんですよ。それが何かのきっかけで次々表に出できたっていうだけだとは思うんですけど。

モーリー:

えっと・・・(むせる) 失礼しました。昨日の時点でインタビューをした作曲者のシカラバさんの言によれば、とにかく今は速報性というか即時性、瞬発力で作曲していて、状態が時局が動いていけば曲もそれに連れて同期して動いていくんじゃないかというような事を言っていましたけど。

宮大工

多分そうだと思うんですよね。時局に連れて曲というのもドンドンドンドン動いていく。それを後から聴いたときに「あぁこういう事もあったんだな」っていう事は分かる、ちょっとアルバム的なもの、写真のアルバム的なものができると面白いなとは思うんですよ。

モーリー:

なんかムネオハウス年鑑みたいな

宮大工

そうですね(笑) ムネオハウスヒストリーみたいなものがそこに出来上がると思うんですよね。

  • 「K Collage」-

モーリー:

今回のムネオハウスという現象というか既にムーブメントとなりつつあるんですけれども。これは2ちゃんねるという巨大掲示板の中でのやり取りが絶えず曲に対する反応をかなりリアルタイムで返していて、作曲者も2ちゃんねるに造詣のある作曲者ばかりなので、その掛け合いの中で成り立っていますよね。

宮大工

はい。

モーリー:

それでオーディエンス・フィードバックが次の曲をある程度決定するとすら言えると思うんです。非常に即興性が高い。その中で幾つかのスレッドの一つを今朝方チェックしておりましたところ、誰かが妹の小学3年生にムネオハウスの曲を聴かせたら笑っていて、反応が良かった。つまり子供が反応してるって事なんですよ。これどう思います? 子供が反応するっていうのは。

宮大工

子供が反応するっていうことは、間口がものすごく広くて分かりやすいっていう事だと思うんですよ。ちょっとでも鈴木宗男の顔と声を聴いたことのある人間は、もうそれだけでネタを瞬時に理解できるっていうか、「あぁこれは面白い」と。それは音楽がテクノだろうとなんだろうと、多分それは面白いものとして感じ取ってもらえると思うんですよ。僕は作ってるわけじゃないんですけど(笑)

モーリー:

逆にね、僕は最近何度も何度も投機と失敗の波を繰り返してきたITですよね。今やソフトバンクすら危ないと言われていますが。これITの分野に商売として繋ごうとする人が早速出てくるような気がするんです。つまり子供にウケるってことは、需要がそこに見込めるっていう事じゃないですか。何が何でも面白いっていうことで。もしこれを誰か例えば代理店筋の人がIT商売として成り立たせようとすれば、一体どういう風にして品物になるんでしょう。

宮大工

多分品物になるとすれば、作った人に全部許可を取ってCDとして出すとかそういうところだと思うんですよ。例えば石立鉄男さんの声をリミックスしたアルバム[1]っていうのをたまたま昨日何かの雑誌で読んだんですけど、多分そういうのもあるんで、版権が取れればもちろん出来るんでしょうけど。
でも作ってる人間自体はそこになった時点で興味を失っちゃうと思うんですよね。それが商売だとか商売じゃないとかそういうレベルでやってるからこそ、みんなモチベーションを維持できると思うんですよ。

*1 ・・・ 石立鉄男の声をフィーチャーした音楽で考えられるのは、93年に発売された猛毒の2ndアルバム『湘南〜おまえはどこのワカメじゃ!?』か、2002年1月発売カエルカフェのサンプリングボイス集『ISHIDATE TETSUO VOICE』のどちらかだが、時期的におそらく後者。

モーリー:

あの・・・ 良く分かります。と同時にね、これを毒抜きしてね、まぁフグの毒抜きをしたような形で、パッケージにした形でとりあえず有名人の声を全部ラップで、藤原紀香から何から全部やろうぜ、今度はアニメキャラとか。アニメ声優の人ってちょっと飽和してるじゃない?そういう専門学校出てきて。アニメーション学院みたいな(笑) コミケもなんとなく終わってるし(笑)
そうするとその名残りの人達が、例えばときめき(メモリアル)の声でラップをするとかそういう企画物が非常に乱立しやすい状況だなっていう気はしました。

宮大工

まぁでも、今回のムネオハウス・ムーブメントと呼ばれる、僕らが読んでいるものは、彼のキャラクターと声とかそういうものが一致して土台となって出来てると思うんですよ。そこに藤原紀香とかアニメの声優だとかでやっても、そこに何もエスプリの効いたブラックなジョークは何も無いと思うんですよ。
別にムネオを支持するわけでも同情するわけでも批判するわけでも何でもなくて、鈴木宗男というもので遊んでしまおう、と。でもそれが物凄い反面、ダークなヤバイものだとわかっているからこそ、面白いと思うんですよ。ギリギリの線で遊んでるからこそ、みんながどんどん乗っていくっていうところはあると思うんですね。
それが、じゃあ「この声を使って良いですよ」って言う風に初めからやったら、多分きっと「ふ〜ん」っていうだけで終わっちゃうと思うんですよね。あの中では。

モーリー:

良い子のムネオハウス(笑)

宮大工

ええ。

  • 「muneo again」-

モーリー:

現在、鈴木宗男議員と辻本議員がフォーカスの中心付近にいらっしゃいますよね。これ、いつまでも続くという期待はそんなに出来ないと思いますけど、このムネオハウスというのは例えば、ムネオ議員に対する注目がマスコミや世間で薄れると同時に一緒に衰退するとおもいますか?

宮大工

多分衰退していくっていうよりは、あのお祭りというものに参加している人間は、じゃあイベントが終わったところでドンと花火が上がって「じゃあ終わりです」っていう区切りがあると思うんですよ。

モーリー:

それを期待してやってるわけ?

宮大工

多分そうだと思うんですよ。で、みんな何を期待して参加しているかっていえば、少なくとも僕自身は、それをやって「無名だけども俺はこれをやったんだぜ」っていう自己満足的な、「名を残してやろうぜ」的なものだと思うんですよ。結局ダラダラ続けたって、「あぁ〜なんか終わってるのにまだやってる」っていう風に見られるのはすごくイヤーンな感じがするんですよね。

モーリー:

これはね、言ってみれば、昔で言うとフランスのその絵とか文学の人達が・・・ アバンギャルドですよね、前衛というのは。前衛ってそれこそマルクス主義から出てきた言葉なんですけど、そういういろんな思想性をある種の純粋さ、そしてまさに仰ったエスプリや、少しダークなウィットですよね。そういうものでこしらえているものをかなり遅れて世の中がそれにキャッチアップしたり、さっき出てきた、想定した藤原紀香のような商品化する動きが後から遅れて来るんですよね。
ですけど今、かなり激しく曲もどんどん作られている。そしてレスポンスの状態も、1000個で一杯になる掲示板のスレッドがすぐにどんどんチェンジしていく。沸騰してる状態ですね。
これを例えば同じ電波であっても、アナログ空中波に依存している、あるいは空からのBS波に依存しているテレビやラジオの媒体がね、追っかけたとしてもやっぱり一拍ずれるんじゃないかな、あるいは一小節ずれるんじゃないかなと思うんですよ。

宮大工

それはもう絶対あると思うんですよ。インターネットが出てきた時からリアルタイム性だとか、ユーザーと直でコミュニケーションできるとか、そういう事を言われ続けてきた最大のメリットっていうものはそこにあるんで。例えば、それを既存のメディアの方々が拾ったとしても、やっぱりそれをメディアに対するユーザーに投げる→レスポンスがある→そのレスポンスに対して何かを返す、っていうスパンが圧倒的に長いと思うんですよ。
で、その頃になってしまうと、最初に突っ走ってた人間は「もうつまらん!」となっちゃうと思うんですよ。「次のネタを探そうぜ」っていう感じだと思うんですよね。

モーリー:

電波メディアの特性として、一回くっついてトリモチとなるまで凄い時間が掛かりますよね。例えば瞬間的に何人かが面白いからって言うんで、感覚を、エスプリを理解した人がグワッっと集まるっていう事はテレビはあり得ませんから。数字が最低でも2-3%いかないとニュースは成り立たないし。ていうことは、一応理解して位置付けをして論説委員を言う事を決めた後でないとゲーム開始にならない。
ところが、電波の特性として一回お祭りを開始すると、結構執着してなかなか・・・

宮大工

離れないですね。

モーリー:

離してくれませんよね。そこら辺が瞬間湯沸し器とはかなり違うわけですよ。
で逆に、今のニュース速報を今日の日付で見ていますとね、野党が一致して自民党を攻撃していたのが鈴木議員だったんですけど、辻本議員の疑惑が出てそれを刑事告発自民党が反撃する、となった途端に野党側が一丸とならなくって。
例えば共産党社民党を批判し始めてますよね。

宮大工

ええ。

モーリー:

で、言ってみればこれ政治的な駆け引きの点で言うと、この隙に野党は「第一党の良い子ちゃんになろう」としている。とにかく流動的なんですよ。
何を言いたいかというと、こういう風に、ムネオハウスがね、製作した方の、本人達の意図とは離れて、そういった野党同士、あるいは野党対与党の素材として一回電波に乗ったときに利用できる、キャッチフレーズ化できるような素材として結構潜伏してるんじゃないかなと思うんですけど。

宮大工

多分それはあるでしょうね。ムネオハウスっていう大変面白い素材があって、それを何かしらに使おうとする国会議員の中でもかなり尖った人達が使ったら、それはそれで面白いとは思うんですよ。

モーリー:

例えばね、次の選挙のときにね、みんな非常にウルサイじゃないですか、けたたましく。同じdB量でやるんだったらウーファー付けてDJが廻してるわけ。廻しながらそれに合わせて若手議員が「おー私はー!」とかいってやっちゃって、そこにダンサーが付いてるとか。そういう今考えたらバカとしか思えないけど、でもムネオハウス流行ると政治の駒として切れるわけですよね?

宮大工

それは多分あると思うんですよ。これは大まかにしか言えないんですけど、僕は昔ちょっと携わった議員さんがいて、その中の企画として「選挙カーに乗ってラップで議員の名前をひたすら連呼する選挙運動をしよう」とかっていうのもあったんですよ。ただ多分それは受け入れられない土壌があるとは思うので、それは無理だと思うんですよ。
例えばDJの人が乗ってガーガーじゃあリミックスしたものを流しても、理解してもらえないと思うんですよね。選挙に行く人って僕らみたいな若い人からおじいちゃんおばあちゃんまでいるわけじゃないですか。で、おじいちゃんおばあちゃんが理解するにはある程度厳しいものがあると思うんですよ。DJがリミックスっていうのは。

モーリー:

ただ投票率っていうのは電車の中吊りを見てると、50代から70代が結構高いですよね、投票率は。

宮大工

ええ。

モーリー:

ですからこの人達は放っておいても政治参加してくれる部分があるじゃないですか。それはとりあえず各党における固定票って考えて良いと思うのね。
で、問題で政局を流動化させる、つまり誰かどっかの政党なりどっかのメディアを利する現象として、これを利用しようと思ったときに、若い人たちの政治への興味、バラエティ的なきっかけで良いんですけど「とにかくこれは投票率を上げるポテンシャルがある」と誰かが見た場合、なんか変わってくるような気がするんですよ。

宮大工

そしたら多分やるでしょうね。そうしたらもっと大掛かりな力になると思うんです

モーリー:

代理店も入ってくるし。

宮大工

代理店も入ってきて、テレビの中で載せて、DJ呼んで、今こういう・・・

モーリー:

ムネオパレード?(笑)

宮大工

(笑) 浦安の埋立地みたいなところで、電飾の山車に乗ってみんな街を練り歩くみたいなそういう物凄いバカバカしい。

モーリー:

上半身ハダカになっちゃって気持ち良いみたいな。

宮大工

そういうのやったら、僕はそれはある種の物凄いブレイクスルーだとは思うんですけど。

モーリー:

でそんなブレイクスルーをね、与野党がテレビで流行ったからという理由で、与野党が若者の得票を浮動票を関心を買おうとしてそういう賭けに出た場合、例えばそこでゲイの政党が興って、そこを勝っちゃうっていうのあるわけ。
つまり若い人だったらゲイの人の視点に結構なびくじゃないですか、政治としては。

宮大工

でもそれってものすごく一発的なものだと思うんですよ。例えば振り返ってみれば、青島幸男都知事に当選してその後支持率があったかっていうとNOですよね、結果的に見て。
で、その後に反動として、僕は好きですけど、実務的な石原さんが受かって、それをガシガシやるから都民が支持してるっていうのがあると思うんですよ。
じゃあ物凄いパレードが起こったとして、それは一発的なものだと思うんですよ。

モーリー:

ハッハッハ(笑)

宮大工

で、僕は若いですけど、自分と同じ世代とかもうちょっと若い世代、更に上の世代っていうのは、そんなにアホでは無いと思うんですよね実際。更に団塊の世代とかそのちょい下ぐらいは、実際世間の厳しさ、不況の厳しさを肌身で感じてると思うんですけど、若い人は若い人なりに勿論自分が就職できないとか給料上がらないとかってところで感じてると思うので。
それがダイレクトに跳ね返って来ない限り、当然一回目の当選の手段としてとかはあると思うんですけど、その次は続かないんじゃないかなと思うんですよ。

--

モーリー:

まさにその利益や不利益を肌身で感じる・感じないっていうのは、政治参加のモチベーションとして大きく左右しますよね。それで、なんていうのかな、もう一つの見えない浮動票の要因としてね、20代-30代の人というのは、特にITに携わってる人なんかはね、結構こき使われてると思うのね。例えばウェブデザインのソフトウェアや、Illustrator、PhotooShop、FlashDreamweaver、全部使えるのに「この程度の金かっ!」ていうの、あるじゃない?
ところがそれが直接政治や政党と結びつかないということで、それが例えばネットの遊びや追いかけに始まった部分で、自分の利益不利益や鬱憤や希望と、ラップかなんか知らないけどハウスを通じてどこか直結した実体感があった場合、彼らの投票するしないに関わらず、政治的な意識というか何か覚醒するものはあるでしょうか。

宮大工

いやそれは、興味を持つとは思うんですよ。例えば小泉さんが内閣になって、今までよりも違うメディアっていうかテレビの中でも違う時間帯、若者向けとか主婦の方向けだとかっていうものに関して、広まった、オンエアされて窓口が広がったように、テレビを見ないインターネットだけでも良いよっていう人の中にも広がってくるとは思うんですよ。だから間口が広がるっていう意味では、僕はそれは凄い素敵な事だと思うんですね。

モーリー:

例えば、民主党のようなところからね、「これはチャンスだ」と。民主党の場合損になっても良いからちょっと投機してみるっていうこと時々やりますから。
例えばシミュレーションでこういうのが好きな人達を特定のターゲットとして、世論を瞬発的な投票で、バーチャル投票にしよう、そして世論を自分たちのモノとして計るというような事を始めた場合、今仰ってたテレビも見ないでインターネットだけは見るっていう人達に対する訴求力を増すでしょうか? そういう政党の方針が出たとしたら。

モーリー:

訴求力を増すかどうか、やってみないと分からないと思うんですけど、そういう大っきなパイの中で、テレビも見ないで政治にも関心を持たないでインターネットだけしてる人間に対して何かしらの博打を打つってのは、物凄い費用対効果の面では悪いんじゃないかなと思うんですよ。僕個人の意見としてですよ。

モーリー:

うんうん。

宮大工

だから、やるかどうかは別として。でもやったら面白いとは思うんですよ。それは昔から言われている政治のインターネット利用だとか、そういう面ではとても面白いと思うんですね。

モーリー:

政治そのものは面白くないけど、痛烈なパロディーは大好き、と。お笑いなら小学生でも付いてくるわけですよね。ここらへんを政治的な資源として、政治側は、あるいはメディア側は考えるのでしょうか。それとも今ある投票の割り当てをなぁなぁで、一番二番っていう風に、とりあえずそれを維持していきたい。連立与党の考え方ね。「寄り合い所帯で良いからこのままみんな寝てくれていれば良い」という風なの。
どっちなんでしょうね意識としては。

宮大工

意識としてはみんな、政権を持ってる人は「寝てくれてた方が良い」と思ってると思うんですよ。じゃあ例えば、ハウスが好きでそのエスプリを理解できる人間が同じように利益団体の人と集票力があるかって言われたら、それは後ろの、利益団体の方が圧倒的に集票力はあるわけじゃないですか。そういう意味では振り向かないっていうか、腰を入れてやろうとは思わないと思うんですよ。でもそこに何かしら新しいメッセージ性を打ち出せて、自分の、党の広報をできるのであれば、それはもちろんやると思うんですよ。

モーリー:

あの、ちょっとまた政治とレイブ・ハウスシーンの結託というようなシナリオで、ちょっとくどいお訊ね方をするんですけど。ドイツのLove Paradeが観光収入としても大きいとして、ついに政府が観光としてEndorse(支援)してしまいましたよね[2]。で、それにつれてドイツのどっちかって言うと右寄り、新ナチ党にも少しシンパシーのある人達が「これは新たなドイツの民族音楽だ」っていうような発言をして、ハウスの中でもジャーマントランスは多少右傾化していったっていうか、政治と密接に結びついたという話を聞いたことがあるんですけど[3]
要するに、人が沢山集まって、それを動員していくという事は、ある意味での大衆扇動の力になると。だからイコール政治だっていうような。そういう理屈がヨーロッパでは結構あるみたいなのね。勿論それはトルコ人が一杯入ってきて、それに対する不安だとか、全然状況は違うんですけど。
全く状況が違うこの今の日本で、そういう風に、例えばムネオハウスのようなものが引き金になってね、これがそういう・・・ 分かんない・・・ みんなの今やってる意識とは全然関係と思うんだけど、右傾化をもたらすとか、玉突きのように予測出来ないビリヤードで雪崩を打つっていう事考えられますか?

*2 ・・・ 元々政治的デモ行進と申請されるため行政が開催を断ることが出来なかった側面がある。その上で1996年から2000年頃まではベルリン市側も支援していた。
*3 ・・・ 過去のAtari Teenage Riotアレック・エンパイアのインタビューに同じ趣旨の発言が確認できるらしい。情報求む。

宮大工

いや、それは考えられないと思うんですよ。例えばムネオハウスが流行ったから、それがすぐハウスだとかテクノだとかに政治に結びついて右の方に寄っていくとはあんまり考えられないんですよ。じゃあどうなれば、例えばムネオハウスが発展して自民党ハウスっていうジャンルができれば、それはあるかも・・・

モーリー:

G-HOUSE(笑)

宮大工

G-HOUSEみたいなのが(笑) できればそれはあると思うんですけど。でも実際作ってる人間達は、いや僕が代弁しても分かんないですけど、そんな事は何も考えずにただボールをボーンと投げて「そのあとは知らん!」と。反応は、例えば「この曲は良かったです」とか「ここはあーした方が良いんじゃない」とか「こーした方が良いんじゃない」っていうものに対しては物凄い興味を示すっていうか、やってて面白いと思うんですけど。
じゃあ自分が投げた玉がどう大きくなって転がっていっても多分「それはもう自分とは関係ないよ」って思うと思うんですよ。

モーリー:

あの発信している、作ってる側の人にはね、ある意味で2つの多少矛盾した要求が突き付けれていると思うんです。一つはあくまで果てしなく限りなく無責任に笑いを最大限に取る方向で行くこと。しかし、その笑いが深くキリで刺すように深く行くためには、やはり時事性を相当に把握して今の状態にマッチした辛辣さが必要だから、逆に政治意識も作家は無意識にせよ皮膚感覚で、エスプリですよね、

宮大工

ええ。

モーリー:

エスプリはとっても強烈に求められるから、ただ無責任に作ってるだけだったら学芸会っぽいっていうか低いと思うのね。それがこれだけ盛り上がるのは、やっぱり政治意識が作曲側の中に、普通の投票者の政治意識とは違うところ? マスコミとは違うところで、自分を軸とした反骨が感じられるからこそ盛り上がってるんじゃないでしょうか。

宮大工

そこはそう思うんですよ。で、僕が一番足りないなって思うのは、笑いっていうものが凄い足りないと思うんですよ。

モーリー:

それは世間一般に。

宮大工

世間一般に対して。僕わりと結構バカバカしい事が好きなんですよ。本当に「お前そんな事やってどうすんだよ」みたいな「それやらないだろ」っていう事やっちゃうようなアホな事が好きなんですよ。
例えば、今ちょっとテレビをそんなに時間が無いんで見て無いからもしかしたらずれてるかもしれないですけど、昔、例えば10年前とか6年前とか、割りとバカバカしい番組ってあったと思うんですよ。例えばテリー(伊藤)さんが作ってたASA-YANになる前の「浅草橋ヤング洋品店[4]だとか、最初の頃の「元気が出るテレビ[5]とかっていうのは物凄くバカバカしい事を一杯やっていて。
そういうのが段々と切り捨てられてっていうか、世間の中で興味を失っていって、どんどん予定調和的な、楽屋落ちネタ的な笑いになっていったっていう事が。別に僕はお笑いが専門なわけでもなんでもないですけど(笑)、笑いっていうものが上品じゃなくなってる感じがするんですよ。

*4 ・・・ 名物企画は「中華料理戦争」、「江頭グランブルー」、城南電機宮地社長と大塚美容外科石井院長による「所有のロールスロイスのエンブレムに綱をくくって綱引き対決」等。参考: Wikipedia - 浅草橋ヤング洋品店
*5 ・・・ 「最初の頃の」と注釈が付くのは「ダンス甲子園」「ボクシング予備校」等の企画がヒットした以降は感動路線へシフトしたため。

モーリー:

仰ってる事は良く分かります。テレビ・電波メディア全体が、マスメディア全体なんですけど、そういう訴える生々しさ。確かに失速してますよね、ここ数年間特に。
それであるTVのプロデューサーに先週ムネオハウスが始まった後で聞いた話なんですが、今やテレビの番組というのは広告主の都合だけで動いていて、広告と広告の間の時間をいかに無難に事無く埋めるかだけが主要課題になって、要するに視聴者じゃなくて広告主のために作ってる番組をやっている。
もしそれが前提として正しければ、まぁ裏話なんですけど、お笑いは痛烈であればあるほど「ヤバさ」を帯びてきますよね。広告主を怒らせる事が最高の笑いじゃないですか。「この後に流れる広告は狂牛病に関連してます」なんて言って流したら、見てる人はギャハハだけど、(広告主は)すぐに降りちゃいますよね。全員降りますよね。でもそれが際どいわけじゃない? それを削がれるから面白くない。つまりそこに一種のスパイラルを感じるんですよ。

宮大工

そうなんですよね。そのスパイラルを多分みんな感じてると思うんですよ。「最近のテレビはつまんない」って。

モーリー:

インターネットのせいじゃないよね? インターネットのせいでテレビがつまらなくなったのでもないし、インターネットのファイル交換のせいでエイベックスのCDが売れなくなったって言ってるけどそうじゃないと思うんだよね。

宮大工

あれは絶対オカシイと思うんですよ。作リ手の側が責任を最初から放棄して、後付の理由を出してやっても、全くユーザーにとっては説得力も何もないわけで。そのCDを聴いて本当に聴きたい人だとか、車の中で聴きたい奴はわざわざパソコンで変換するよりも3000円出して買いますよ多分。よっぽど貧乏なら別ですけど。
パソコン持ってファイル交換できる奴が3000円持ってないと僕は思わないですから。

モーリー:

(笑)

宮大工

ええ。

モーリー:

じゃテレビの失速についてはどう思われますか。例えばお笑いに始まる。どうしてこんなになってるんだろう。

宮大工

やっぱりそれはテレビ業界というものが違う意味で洗礼されてきたと思うんですよ。

モーリー:

洗練されてきた。

宮大工

洗礼されてきた。

モーリー:

せん・れい

宮大工

洗礼されてきたと思うんですよ。昔はある程度手探りの状態で「ここまでは行けるだろう」「ここまでは行けるだろう」ってところから、どんどん「いやそこはダメ」「アレはダメ」「コレはダメ」っていうものがどんどん狭まっていって。結局僕の個人的な主観としてはつまらない方向にどんどん行ってると思うんですよ。
で、その反動として、ムネオハウスみたいな、もうめちゃくちゃヤバそうな、肖像権とか著作権はどうなっとるねん、っていうもので遊ぶ事に対してもの凄いムーブメントが起こる感じがするんですね。

モーリー:

非常に興味深い視点だと思うんですけど、言ってみればこれは本来テレビが深夜帯にやるべき事なんでしょうか。

宮大工

そうだと思うんですよ。昔の深夜番組って・・・

モーリー:

もっと怖かったですよね。

宮大工

もっと怖かったですよね。

モーリー:

俺も怖いのやってたよ(笑)[6]

*6 ・・・ モーリー・ロバートソン氏は1994年10月-1995年3月放映のフジテレビ土曜深夜の番組『Revolution No.8』の司会をしていた。

宮大工

(笑) たまに年に一回ぐらい凄い事やったりするところもあるんですけど。例えばその鳥肌実みたいなヤバイ人がいきなりテレビに出てきて、あんなネタをやっちゃうとか、大川興業が出てきて物凄い時事ネタをやっちゃうとか、そういう事をたまにやったりするんですけど。
でもそういうのが多分恒常化できるところがインターネットだと思うんですよ。

モーリー:

あとインターネットというのは、速度もそうなんですけど、皮膚感覚と言い切れるのかどうか分からないけど、距離近いですよね。対話の中で成り立っているから。テレビっていうのは100万人が見ていた番組であれば、100万人の視線がその瞬間空中波に一点に釘付けになって、横の対話は仕組みとして無いわけじゃないですか。
そこら辺も、テレビから、どちらかっていうとムネオハウスっていうのをね、本来のテレビが回復してるっていう見方では全然なくって、むしろ大道芸に戻ってるような気がするのね。

宮大工

そうですね。そんな感じはしてるんですよ。だから僕が思うのは、テレビ自体もつまらないし、政治をやってる人にもうちょっと笑いが欲しいなって思うんですよ。
例えば、それは国民性の違いだとか、国民の笑いの理解度とかもあると思いますけど、ブッシュさんがプレッツェルを詰まらせたっていう、あれが本当か嘘かどうかはともかくとして、詰まらせて倒れたっていう次の日に、「よく噛んで食べなさい」っていうメッセージと一緒にプレッツェルを配ったっていうのは、それはベタですけど、日本の政治家には出来ないエスプリの効いたジョークだと思うんですよね[7]。あえてそれを笑いにして、誤魔化すじゃないですけど、しちゃうっていうのが。そういうのがもっとあった方が良いと思うんですよ。

*7 ・・・ 2001年1月14日、フットボール観戦中にプレッツェルを喉に詰まらせ気絶、顔を怪我し話題となった。後日、ブッシュ大統領本人がエアフォースワンの中で「よく噛んで食べるように」とのメッセージを付けてプレッツェルをスタッフに配った。


モーリー:

あのリミックスの中の一つにですね、たしか桃井かおりが出ている「ええじゃないか」を使った奴かな?[8] 「ええじゃないか ええじゃないか ええじゃないか」っていうのがあれ多分「ええじゃないか」の映画[9]から採ったんじゃないかと思うんです。

*8 ・・・ ubartamarの曲「ええじゃないか」の事。一時期1stアルバム収録作品という扱いで流通した。
*9 ・・・ 1981年の映画。桃井かおり主演。参考: Wikipedia - ええじゃないか (映画)


宮大工

多分そうですよね。あれ誰もムネオハウスの人が作ってないんですけど、あれがいつの間にか紛れ込んだんですよね。


モーリー:

でも僕凄いねタイムリーだと思って。「ええじゃないか」っていうのは、大道芸のようなみんなで道端の中で大混乱の中で騒ぎながら、なんとなく痛烈な幕府の批判を、黒船に対して無策だった事に対してやった、みたいな事を良く言われていますよね。

宮大工

ええ。

モーリー:

で同時に、それこそムルアカさんの出身地である旧ザイール、今のコンゴなんですけど、ああいった西アフリカ、東アフリカの国では、今でも吟遊詩人、大道芸人の楽器を手にした吟遊詩人が、時の時事評を文字が読めなかったりする人のために歌って歩くそうなんですね[10]。で、本当に悪い政府になってくるとそういう人達を弾圧するっていう話を聞いたんですよ。だから現地ではそれが、大道芸が歌で政治批評を展開してる事実があるみたいなんです。そういうのと妙に共鳴するなムネオハウスは、って思いました。

*10 ・・・ エチオピアの吟遊詩人・Azmari/アズマリがそれに当たる。参考: コトバンク - アズマリ とは

宮大工

それは多分作ったときは誰もそんな事思ってなかったと思うんですけど、今結果的に、まだ終わってないですけど、振り返ってみるとそういったものも多分に有るんじゃないかなって僕は思うんですよ。例えばユーザーの反応を見て曲を作っていく、でまたそれを見て曲を作っていくっていうのは、例えば路上でミュージシャンが即興で何か曲をやってて、リクエストしたからそれに応えるっていうのものにもの凄い近いと思うんですよね。その感覚に近いと思ってるんですけど僕は。

モーリー:

路上のミュージシャンっていうのは大抵弟か友達か小さい子供なんかがいてですね、靴箱を持ってグルグル回ってみんなからお賽銭を徴収してもらったりするんですけど、ムネオハウスを作ってる人達に、非常に違法性もあると自分たちで認めているんですけども、その創作性に対してですね、利益を還元する仕組みなんて考えられませんか?

宮大工

いやぁどうでしょうねぇ。利益を還元する仕組みっていうのは。多分みんなこれでガメつく儲けようとは思ってないと思うんですよね。

モーリー:

ムネオハウスで一発。ムネオハウス長者(笑)

宮大工

多分無いと思うんですよ(笑) 変な意味で「ムネオハウスで一発当ててやるぜ」っていうやつは多分あそこに出さないと思うんですよ、曲を。で、何かしらそれで収益を還元できるのであれば、僕は作品が生まれた2ちゃんねるっていう場所に還元すべきだと思うし。僕らは回線使用料っていう形でプロバイダーには払ってますけど、2ちゃんねるというものに対して何もお金を払ってないわけで。例えば去年の8月にあの2ちゃんねるが潰れるかもしれないっていう騒ぎがあったんです[11]

*11 ・・・ 2001年8月25日の2ちゃんねる閉鎖騒動。参考: jp.blogs.com - 2ちゃんねる閉鎖危機...その時、可能性を信じて人々は立ち上がった!(2001年)

モーリー:

売りに出したときですか?

宮大工

そうです。売りに出したのは多分ネタだと思うんですけど、主催者のひろゆきさんの。ただその中でお金が無いのは事実で、なんとかしてお金に変えたいと。で、あそこにいるみんなっていうか、2ちゃんねるに、本当に住み着いてるっていう言い方は変ですけど、いる人間は、何か機会があればお金を出しても良いと。それが何か形があれば、対価として払っても良いよっていう風に思っている人間は多分一杯いると思うんですよ。あの時の反応を僕は傍から見てて「あ、みんなわりと良い奴なんだ」と。

モーリー:

あのね、取材をして回ったところ、みんな良い奴すぎて困っちゃった(笑)

宮大工

(笑)

モーリー:

なんか暗いこと、暗い笑いはあるんだけど、あくまで上品なエスプリなんですよ。インテリなんですよ。本当に腹黒いこと考えてそうな人がいなかったねぇ。

宮大工

なんで、例えばもし還元できるのであれば、じゃああのCDを曲でmp3で聞けるけども、じゃあ聴けない人のためにCDでまとめて、2ちゃんねるの運営会社に・・・

モーリー:

Amazon?

宮大工

(笑) 売ってもらうとか。で、利益として、収支を明確にしてくれるんであれば、2ちゃんねるのサーバ運営費に充ててくれ、っていうのは僕は個人的にはそれは有りじゃないかなと思うんですよ。ただ僕は実際曲を作ってるわけじゃないので(笑) 僕はただサイトを自分のできる範囲で作ってみんなをサポートしてるだけなので、それは皆さんの意見があると思うんですけど。僕はもし収益を還元するんであれば、そういう方法はみんなが納得して誰かの利益になるわけでもなく、それは後々自分達に戻って来るっていう意味では良いと思うんですよね。

モーリー:

なるほど。それすごく魅力的な収益モデルだと思うんですね。チューニングを加えていくと、多分決済サーバなんかを導入した凄い事にも成り得ると思うんです。そうなった場合、2ちゃんねるがメディアとして肯定されるわけですよね。偶発的なものではなく。そうするとフランスやドイツにある反体制のアングラ新聞ってあるじゃないですか。毎日のようにパロディを流したりする。で、日本のスポーツ新聞っていうのはどっちかっていうと最終的にはどっかに迎合している雰囲気があったり、芸能界の御用聞きだったりするんだけど。俄然そうじゃなくて、遊軍的な新聞っていうのかな、そういう存在に2ちゃんねるは利益を得る事でなったりしますか?

宮大工

いや、それは多分無いと思うんですよ。

モーリー:

あくまでもああいう無法地帯のような。

宮大工

無法地帯だと思うんですよ。多分それが魅力だろうし、それがなくなった瞬間にみんな離れていっちゃうと思うんですよ。例えばここは左的な発言をしてはいけません、右的な発言をしてはいけませんっていうのは、

モーリー:

所謂エディトリアルですよね。社説みたいな。

宮大工

それって、ものすごく本末転倒だと思うんですよ。あそこを作ったっていうのは「あらゆるものに縛られずに自分の言いたいこと言っていこうぜ」っていうところが原点だと思うんですね。いやそこが原点かどうか全然分かんないですけど(笑)

モーリー:

(笑)

宮大工

だからそういうことで発展してきたんで、そこが何かしらの権威を持つっていうのは、みんな考えてないと思うですよ。結果としてそれは付いてくるかもしれないけど。中にいる人間は、例えばあそこは2000万アクセスとかあるわけじゃないですか、その結果としてそれが生まれるわけであって、じゃあ2000万人が同じ意見を持ってるかっていうとみんな2000万の意見を持ってると思うんですよ。だからそれはあり得ないと思うんですよ。

  • 「Sougou shosha」-

36:20

モーリー:

それでは最後に宮大工さんにお聞きしたいのですが、今そのムネオハウスの流れ、爆発しつつあります。どこに行ったら面白いとおもいますか? どこに行って欲しいですか、個人的に?

宮大工

個人的に最後の締めとしては、ロフトプラスワンに物凄い列が出来て、列がテレビに取材されて「なんなんだあれは?」と。でももうその時には全部終わっている、っていう(笑) 僕の中ではムネオハウスらしいっていう。誰かが鈴木宗男のお面を被って、涙の会見をして終わりみたいな(笑) 最後までジョークで終わりっていうのが面白いと思います。

モーリー:

一拍置いて次のジョークがあったら良いですか?

宮大工

まぁあれば良いと思うんですけど。多分あそこに来てる人間だとか作ってる人間だとか参加してる人間ってのは、何がしらみんなお祭りが好きなんですよ。多分、鈴木宗男の前は田代まさしのお祭りに参加してたりだとか、次に違う祭りが行われてたらそこに行って、また新しい、テクノでも何でもないもしかしたら全然違う形が生まれるかもしれないし、そういうのをみんな見たいと思うんですよ。そこに向かって「俺も何かしたい、参加したい」っていうところだと思うんですね。

モーリー:

ワッショーイってやつですか

宮大工

(笑) ワショーイってやつです。彼等・・・、僕もそうなんですけど(笑)、2ちゃんねるの人が言うところの「祭だワッショイ」っていう奴ですね(笑)

--

モーリー:

引き続きガーデンプレイスの回廊を歩きながら話を聞いています。日本には予定された笑いしか結局今のところ無いですよね?

宮大工

そういうことだと思うんですよね。じゃあ「この人イジってくれ」「ここでドンと笑って下さい」とか。ただイジったりとかイジメたりとかそういうの。

モーリー:

力関係が予め決まった笑いしか欲しくないですよね。日本のマスメディアとか。

宮大工

それって凄いつまらないなぁと思うんですよ。「この人イジっちゃダメですよ」っていうのをイジるからそれが面白いと思うんですよ。

モーリー:

もともと政治の面でもディベートや議論、反対意見を封殺することにはみんな長けているけど、反対意見を取り入れるのはすごくアレルギーあるんじゃないかな。

宮大工

そういうのがまだ下手くそなんですね多分、日本人って。それが海外から、全く別個のところから来たら、良い物として受け入れるんですけど、それが身近なとこから出ちゃうと受け入れられないんでしょうね。

モーリー:

あのMr.ビーンをやってるローワン・アトキンソンはね、大変な反社会活動家らしいんですよ。凄い与党が嫌いで、とにかく与党をこき下ろすためなら何でもやるっていうことで有名な人で[12]。イギリスではそれで支持されているんだけども、日本だとスラップスティックとしてのみ彼を認識してますよね。

*12 ・・・ 欧米におけるコメディは時の政権や公権力を当然のようにSatire/風刺の対象にする。Mr.ビーン以外のローワン・アトキンソンの諸作品でも行われているが、これを持って「大変な」「反社会活動家」と言うのは難しいと感じる。

宮大工

多分そうですよね。日本で言うところの志村けん的な位置付けだと思うんですよ。日本人には「あぁMr.ビーンの人はイギリスの志村けんみたいな感じなんでしょ」っていう。僕は志村けんは好きですけど、ちょっとそういう位置付けはちょっと違うのかなっていう。

モーリー:

所ジョージ志村けんという大御所さん達は、どっちかって言うと予定調和の上で大御所になったっていう、そういう取引きがどっかであった感じですよね。

宮大工

そうですよね。

モーリー:

話によると所ジョージさんは最初社会派の暗いフォークを歌っていて[13]

*13 ・・・ 真面目なフォークの体裁でふざけた内容を歌っていただけで暗い社会派と言われるようなものでは無かったはず。情報求む。

宮大工

凄い暗いフォークを歌ってて、でもその中にちょっとウィットに富んだ笑いがあったんですよ。僕凄い好きで最初の頃聴いてたんですけど。

モーリー:

それってもしかして「光る風」[14]から「がきデカ[15]に移ったときのあれかな?

*14 ・・・ 1970年に「週刊少年マガジン」上で連載された漫画。山上たつひこ作。非常に重苦しいテーマの社会派SF作品。
*15 ・・・ 1972-1980年に「週刊少年チャンピオン」上で連載されたギャグ漫画。同じく山上たつひこ作。スラップスティック・コメディの草分け的作品。参考: Wikipedia - がきデカ

宮大工

(笑) そういう革命的な流れかもしれませんね(笑)

モーリー:

がきデカ凄いっすよね。

宮大工

そういうある種エポックメイキングなものかもしれないですね。

モーリー:

今日山の手に乗って恵比寿に来るときに「練馬変態クラブ」[16]っていうのを思い出して。あの荒涼とした何も無い団地っていうか、当時の中にね、「練馬変態クラブ」を見出した山上は凄いなとか思ったんです。

*16 ・・・ 『がきデカ』に登場するブリーフ一枚の男性三人組。文字通りの変態。

宮大工

(笑)

モーリー:

本当のユーモアってそういう事じゃないの、って?

宮大工

そうだと思うんですよね。「イジっちゃいけないものをイジる」っていうのはやっぱり醍醐味だと思うんですよね。

モーリー:

もしかして、僕はあんまり造詣無いんだけど、西洋で、西ヨーロッパでも、SMとかもそういうエスプリに関わってくるんでしょうか?

宮大工

まぁでもSMも洗練されていくとそうなるんでしょうね。でもそこまでのものは誰も求めてないと思うんですけど。

モーリー:

ただ気持ちいい(笑)

宮大工

多分そうだと思うんですよ(笑)

  • 「dj battle」-

備考

記事投稿日: 2013年3月31日
音源を提供して頂いた皆様に深く感謝致します。