ユリイカ2008年12月臨時増刊号

東浩紀伊藤剛、谷口文和、DJ TECHNORCH(テクノウチ)、濱野智史による座談会記事「初音ミクと未来の音 同人音楽・ニコ動・ボーカロイドの交点にあるもの」にて、同人音楽文化の歴史を語る文中でちょっとだけ登場。

濱野 : 先ほどLeafの話から始めましたけど、同人系の電子音楽の人たちの源流には、『ビートマニア』などの90年代後半に一世を風靡したいわゆる音ゲーがあったそうなんですね。
その後、テクノウチさんがおっしゃったフリーウェアの音ゲーが登場して、これのためにオリジナル曲をつくるようになった。すると、みんなゲームセンターのものより、もっともっと難しい曲を作ろうとするわけですね。とにかくすごい速い曲を、ということで、どんどん曲が速くなっていった(笑)。
そこでテクノウチさんもそうだとのことですが、「ガバ」というダンスミュージック界最速と言われていたジャンルに辿りついていく。
テクノウチ : ただ、音楽ゲーム自体は中高生が初めてテクノやクラブミュージックに触れるきっかけになったわけですけど、ネットではいまのニコ動のランキングのように作った曲がどれだけダウンロードされたかというランキングが出るページが始まったんです。そのランキングの曲を次々とISDN回線でダウンロードしていく過程でいろんな音楽のジャンルを知っていった。
もちろん、元はやはりオタクっぽい人が多かったので、アニソンとかが多くて、『北斗の拳』の「ほあたぁ」というのに合わせてキーを叩くと今のフラッシュみたいなアニメが映るというのが出てきたりした。その辺はいまのニコ動的な動画のはしり言えるかもしれません。
その人たちが当時流行っていたオウム真理教の音楽に合わせて「ポアポア」みたいなネタ物音楽へと行き、そこから大流行した「ムネオハウス」が出てくる。あれは音楽ゲームで知ったクラブミュージックと、それにフラッシュを乗せるというアイデアがプラスしたところから出てきたものですね。
濱野 : ちょっと補足すると、先日の文学フリマで頒布されたゼロアカ道場の同人誌『最終批評神話』でインタビューされていたアイドルマスターアイマス)のMAD職人であるわかむらPさんも、元々ムネオハウスのMADを作られていた。
だから、いま出てきている人たちは初音ミクアイマスやニコ動で突然出てきたというわけではなく、既にその時点からすごく近いところで活動してきたわけですね。少なくとも僕がニコニコ動画上の「N次創作」と呼んでいるような現象の源流は、90年代後半、美少女ゲームや『ビートマニア』といったところにあった。
で、その次は東方ブームということでいいんでしたっけ?
テクノウチ : いや、そこまではまだまだ長いです(笑)。
初音ミクと未来の音 同人音楽・ニコ動・ボーカロイドの交点にあるもの」 『ユリイカ2008年12月臨時増刊号』 (青土社 2008) p.145

ムネオハウスをBM98辺りからの同人音楽の流れに全部のっけてしまうのはちょっと乱暴な話だと思いますが、特に座談会の本題とは関係ありませんし、こんなもんで良いのでしょうね。

補足

引用にあたり、発言者名の強調、改行の追加を行いました。