鈴木宗男 公判開始

午前10時、東京地裁で一番広い104号法廷に現れた宗男被告。
紺のスーツに白いシャツ。茶色のスリッパ。胸に議員バッジはない。“勝負服”とされた黄色のネクタイもつけることは許されない。
入廷の際に一礼し、席に着くと裁判長、検察官に頭を下げた。氏名、生年月日、本籍地、現住所。裁判長の質問に、かすれた声で答える。
職業を問われると、「衆議院議員です」と直立不動で話した。
5カ月近くの拘置所生活にも、やつれは見えない。起訴状朗読の間も直立不動。罪状認否に移ると、背広の左ポケットから眼鏡を取り出し、用意した大きな書面を目の前に広げる。
「国会議員の立場でありながら、裁判を受ける事態になり、国民の政治不信を招いたという意味で深くおわびします」と、まずは謝罪の言葉。
続く、「しかし」で声を張り上げ、有力後援企業の「島田建設」(北海道網走市)と製材会社「やまりん」(帯広市)から計1100万円のわいろを受領したとして、受託収賄とあっせん収賄の罪に問われた2つの汚職事件について、頬を紅潮させ「請託を受けたり、わいろを受領したことはない」などと強調した。
また、追起訴された政治資金規正法違反と議院証言法違反事件にも「記憶通りの事実を答えたもので偽証の事実はない。虚偽の記載があることは提出時に知らなかった」と無罪を主張。声のかすれは消え、起訴事実を否定していく。
「就任祝いと(わいろとされる)500万円は同一ですか」。朗読後、裁判長が補足質問すると、宗男被告は「わたしが聞いているのは400万円。やまりんから就任祝いは…」と早口でまくし立てる。裁判長が「詳しいことはいいですから」と止めると、傍聴席から失笑が漏れた。
裁判長の別の質問にも、同様に“ムネオ節”が炸裂しそうになり、また制止された。
一方、検察側は冒頭陳述で、宗男被告の関与を詳述。金銭授受の実態を明らかにした。

法廷闘争開始。

石原氏はこの日、フジテレビ系「報道2001」、テレビ朝日系「サンデープロジェクト」にかけもちで出演。
サンプロ」では北朝鮮に残された拉致被害者の家族について「子供を一人でも迫害したり病気といって殺したりしたら、日本は堂々と戦争したっていい」と北朝鮮に“宣戦布告”。慌てた司会の田原総一朗氏が「今の憲法では(戦争は)できないですよ」ととりなしたが、「北朝鮮は破天荒でグロテスクで想像を絶した国」「汚い、非人間的で姑息な国」と過激発言はとまらなかった。
怒りの矛先は、日本国内にも飛び火。昨年5月、金正日総書記の長男・正男氏とみられる男性が日本に密入国した際、外務省がみすみす北京へ出国させた不手際を持ち出し「雑居房にぶちこんで拉致問題の交渉をすべきだった。田中真紀子みたいなバカな外相を登用したことが間違い」と、当時の真紀子外相の対応を一刀両断。「(北朝鮮が)手なずけた政治家が、今バツ悪いでしょ? 社民や共産だけじゃなく、自民党にもいる。土井さんだって反省して頭をそったらいい」と「拉致はない」と言い続けてきた国会議員の責任問題にも言及した。

先月には、釧路市根室市の後援会関係者に、宗男被告と妻の連名で身の潔白を訴える文書を送付。地元の一部には「先生は必要」という支持者もいる。コンゴ人の元秘書ジョン・ムウェテ・ムルアカ氏(41)もマスコミの取材に「キリストは罪をかぶって死刑になった。あれと同じ」などと、“宗男キリスト説”まで唱える傾倒ぶり。
だが、大半の支持者は「初公判に関心ない」「裁判で勝っても、復権できないだろう」と冷ややかだ。<<