デカ長の「MUNERE'02・お手伝いレポート」

MUNERE'02にお手伝いとして参加していたミラーサイト管理人・デカ長氏のイベントレポートが公開。プロジェクトX風。

デカ長の「MUNERE'02・お手伝いレポート」(敬称略)

平成14年7月──
梅雨明け宣言が出された猛暑の東京で、そのイベントは行われた。

──MUNERE'02。
ムネオハウスムーヴメントの集大成とも言えるこのイベントの陰で、一人の男が右往左往していた。
男の名はデカ長。──ただのミラーマンだった。

これは、翌日の予定を顧みず、終電を諦めタクシーに乗ることを捨て、イベントを最後まで見届けた男の、壮絶な、ドラマである。


7月26日──
運営スタッフから引率班に抜擢されたデカ長。待ち合わせ場所で使う看板を携えて出勤した。
仕事帰りに集合場所に移動するつもりだった。
しかしここで、重大なミスが発覚した。イベントがあるのは27日の夜であって26日深夜では無い。
デカ長は日付を1日間違えていた。気づいたのは会社に到着してしばらく経ってからだった。目の前が真っ暗になった。

肩を落として帰宅したデカ長、ネットでの情報収集もそこそこにテレビゲームに興じた。
翌日の集合時間前に某・格闘ゲームロケテストに参加するための最終調整だった。
期待に胸が膨らんだ。調整は明け方近くまで行われた。

7月27日──
昼過ぎに目が覚めたデカ長、シャワーを浴び、身支度を整えて集合場所である新宿に向かった。
予定の時刻より2時間早い到着。その足はまっすぐ西口スポーツランドに向かっていた。
デカ長は思った。「今回もやっぱりリオンは弱キャラなんだろうな…」 愚痴だった。

目当てだったロケテストの順番待ちをしている所に、同じ引率班に志願した男──Gが現れた。
デカ長はGと共に集合場所である「上高地」に向かった。他のスタッフがすでに集まっていた。
皆、一心不乱にCD-Rのラベル貼りを行っていた。しかしここで致命的な問題が発生した。

──ラベルシール貼り器が足りない

シール貼り人員の数に比べて、圧倒的にシール貼り器が足りなかった。
デカ長、スタッフと共に買い出しに出かけた。そして、数件の店を回ってラベルシール貼り器3台を購入。
支払いはポイントカードで行ったので実質ロハだった。

3台のラベルシール貼り器を抱えて急いで「上高地」に戻った。そこには信じがたい光景が繰り広げられていた。

──ラベルシール貼りは終わっていた

「せっかく(タダで)手に入れたラベルシール器なのに…」 デカ長、途方に暮れた。
自宅にプリンターを持たないデカ長にとって、ラベルシール貼り器は無用の長物だった。希望者に配ってみた。不評だった。

そして、引率の予定時刻がやって来た。Gと共に集合場所である新宿駅東口交番前広場に向かった。
集合場所で手作りの看板を掲げると、一人、また一人とツアー参加者が集まってきた。
中には手作りのポスターを一緒に掲げてくれる参加者もいた。デカ長は胸が熱くなった。
そして出発の時間。歌舞伎町方面への大移動が始まった。

看板を掲げて先導するデカ長とGに、通行人の冷たい視線が突き刺さった。
チラチラと横目で見ながらひそひそ話をする人もいた。

『私はこの仕事に誇りを持っています。世間の好奇の目には負けません。』
恥ずかしいセリフが頭を過ぎり、デカ長は苦笑した。

移動の途中で、スタッフの集合場所であった「上高地」の前に差し掛かった。
ツアーの移動を一端停めて、中に詰めていたスタッフに、中間報告をした。
そして「スタッフ証」を受け取り移動を再開。程なくしてミラノボウル前に到着した。
整理券配布チームと整列チームは、既に現場で作業を開始していた。

引率班のデカ長、ここで仕事は終了のはずだった。しかし人員整理要員が足りなかった。
デカ長は悩んだ。このまま仕事を他のスタッフに任せて家に帰るべきか、手伝ってから3割増のタクシーで帰るか。
実は、デカ長はイベントには参加せずに帰宅する予定だった。翌日に外せない予定が入っていた。

しかし、整列スタッフの手伝いをすることにした。

──終電を、諦めた

「タクシーがある。幸い、財布の中身は潤沢だ。その気になれば駅前からだって帰れる。問題ない。」
そう思いながらもデカ長は、人員整理の作業を続けた。来場者も協力的だった。
気が付くと、夕方から着ていたサッカーTシャツは大量の汗を吸い込み重くなっていた。
ユ二ク□のDRY素材の吸水速乾性を持ってしても、滝のように吹き出す汗を処理しきれなかった。

「Tシャツはヌルヌルするゥ〜、茶筒ぅ開かな〜い」
意味不明なペリーの幻聴がしたような気がした。限界が近づきつつあった。

そして遂に、広場に整列していた来場者を全て会場に招き入れた。
「これで帰ろう…。でも最後に会場内にいるスタッフ達に挨拶しておくか…。」
と思ったとき、入り口近くに戻ってきたスタッフの数が足りないことに気が付いた。
訪ねると、遅刻したお客の為にミラノボウル前で数名が待機しているとのことだった。

「どうせ帰る身だ。彼らのサポートに回ろう。」
何度も往復した道を広場に向かって戻った。

広場に待機していたスタッフと合流してしばらく雑談を交えつつ、お客を待っていた。
30分ほど待ったが、お客が来る気配は無かった。そして、会場に戻ることになった。

会場の入り口では、会場飾付と受付を担当した裏むねが待機組を出迎えてくれた。
裏むねは言った。「デカ長、ホントに帰っちゃうの?」

デカ長は迷った。
今からタクシーで帰れば十分な睡眠がとれるだろう。
しかしイベント会場を見ることはできない。
内部に貼られているであろう大量のポスターも。

階下からうっすらとDJ sondu miriuのプレイが聞こえてきた。
この階段を下れば・・・。LPOの再現を見たい・・・。でもTシャツはベタベタ・・・。
何気なくトートバッグの中に目を落とした。
何故か着替えのTシャツが入っていた。

“このギコトートバッグがサ、オレに朝まで踊れって、そう教えてくれるワケヨ”

覚悟は決まった。朝まで残ろう。この際、2〜3時間の睡眠時間は捨てる。
睡眠時間と引き替えに「次の領域」を手に入れる。濃密な時間を。

「やっぱ、行けるトコまで残るワ。どうせ何時タクシー拾ったって3割増は変わらないし。」

そう答えた。照れ隠しだった。

フロアに降りる途中で楽屋に寄った。
汗ダクのTシャツを着替えて、一息ついた。
そしてフロアに降りた。一緒に作業をしたGと裏むねが待っていた。
狂ったように踊った。着替えたTシャツはすぐに汗ダクになった。

若いGは休みなく踊り続けていた。体力の無いデカ長、すぐにバテた。
フラフラになりながら楽屋へ帰った。なぜかスタッフの大半が溜まっていた。

「アレ?デカ長、帰らなくてイイの?」皆が聞いてきた。
「今、高いタクシー拾って帰るのもアレだし…、とりあえず居られるトコまで居るつもり」
笑いながら答えた。しばらく楽屋で休んで再びフロアへ。

次に楽屋に帰ったとき、スタッフの中の誰かが言った。
「早いお客はもう帰り始めている。お土産を用意したほうがイイ。」
お土産とは「上高地」でラベル貼りをやったCD-Rだった。
100枚ほど出入り口に設置して、常にスタッフが常駐するようにした。

まばらながら、やはり帰るお客がいた。
CDを渡してお礼とお見送りをする。
出入り口と楽屋を行き来する頻度が高くなった。
ふと下を見るとスクリーンに「あやや」が・・・。
笑いながら防音扉を開けてフロアに出る。
一頻り踊ったところでまた出入り口に戻った。

そしてエンドロールが・・・あ、止まった。XPのダイアログが被る。
不正な処理だった。確かに不正だ。何よりも内容が黒い。モーリーの怨念か?

笑いながら、ふと横を見た。ある女性スタッフが感慨深げにスクリーンを眺めていた。
「もう終わっちゃうんだね…」 彼女は呟いた。

家路につくお客達が出口に集まってきた。次々とお土産のCDを手渡してゆく。
全てのお客を見送り、片付けを終えて地上に出た。
いつもの歌舞伎町の朝が、そこにあった。

満足だった。最高の時間を体験できた。タクシーで帰らないで良かったと思った。

しかし、その後が辛かった。眠気との壮絶な死闘が、大口を開けて待っていた。

「あ〜、もう若くないな。」デカ長は思った。

おわり
ミルァ (WebArchiveより発掘)

ラベルシール器の件は本当に気の毒でした。