情報社会学ハンドブック ちょっとだけ掲載

今月発行された一冊。名前の通りハンドブックスタイルで58項目の情報社会学のテーマとしている話題がコンパクトにまとめられている一冊です。
この中で、学習院大学教授・遠藤薫氏が担当した「48. インターネットは<世論>を形成するか?」内で、冒頭の節でちょっとだけムネオハウスの単語が出ていましたので引用してご紹介。

ネタオフとフラッシュ・モブ

最近、ネット空間から発生しながらそこを超えて<現実空間>のなかに闖入するようなパフォーマンスが増えている。たとえば2002年の「ムネオハウス」ムーブメント、2003年に入っては、「マトリックスオフ」、「折り鶴運動」などである。これらは、ネット上で生まれた「ネタ」を媒介に現実空間で集合的なパフォーマンスを行うというもので、「ネタオフ」とも呼ばれる。ただし、「ネタオフ」は、「政治性」に対しては強い忌避感を示し、あくまで「ナンセンスなパフォーマンス」として自らを提示しようとしている点に大きな特徴がある。
海外でも、ネットを媒介としたナンセンスな集合的パフォーマンスが1990年代から目立つようになっている。それらはe-mail mob、flash mobなどと呼ばれ、一般の個人による政治的意思表明のための集合行動を目指すというよりは、一種のアートとして認識されているようである。ただし、必ずしも政治的行動ときっぱりと切断されたものともいえない。
ラインゴールドは最近著した『Smart Mobs』で、携帯電話などより一般的なモバイル・ネットワークが、従来よりもさらに自由で有機的な人びとの連帯を可能にし、新しい携帯の市民活動や政治活動の可能性を拓くであろうと示唆している。しかしながら、2003年のイラク戦争においても、確かに注目すべきネット上の動きはあったものの、それは1960年代に世界を突き動かしたような運動とはなっていない。
遠藤薫 「インターネットは<世論>を形成するか?」 『情報社会学ハンドブック』 (東京大学出版会 2004) pp.202-203

なお本文では「ムネオハウス」に脚注が付いており、遠藤先生のムネオハウス論文が採録されている『電子メディア文化の深層』を参照する旨が添えられています。

備考

記事投稿日: 2011年12月9日